【双極性障害⑪】50代男性

プロフィール

  • 治療期間:X年3月~X年5月の61日間
  • 主訴:眠気が続く、易疲労感、憂鬱、被害妄想、焦燥感
  • TMS治療の目的::抑うつ状態の改善
  • TMS治療プロトコール:従来rTMS(1,800発/回)30回

これまでの経過

3年程前、転職先での仕事量の多さがきっかけで抑うつ状態が発現し、休職を経て復職されましたが躁状態が発現。

その後再び抑うつ状態になり、強い希死念慮が生じたため入院加療を行いました。

入院により症状が落ち着くも、過鎮静の可能性もあり臥床がちとなり、TMS治療を希望されました。

万が一症状の増悪や躁転が生じた場合は再入院することを条件に、治療導入となりました。

上記症状により約1ヶ月の入院歴あり。レキサルティ・レボトミン(抗精神病薬)、デエビゴ・レンドルミン(睡眠薬)、リーマス(双極性障害治療薬)を服用中です。

TMS治療経過

双極性障害⑪の心理検査の結果をご紹介します
※HAM-D・MADRSは医療スタッフが評価するうつ症状心理検査で、SDSは患者さん本人の自覚症状を評価するうつ症状心理検査

抑うつ状態を改善するため、右低頻度rTMS(1,800発/回)を30回行いました。

TMS10回終了時は、奥様から見て「前より調子良さそう。表情も明るく、よく眠れているみたい。朝の気分も良い。きっかけがあると被害的になる感じはまだある。」とのことでした。

TMS20回終了時には、ご本人は「頭がクリアになってきた。睡眠時間もとれていて、飲酒もしていない」と。

奥様は「調子よくなっていると思う。日中活動的になってきた。一緒に外出できるようにもなり、ネガティブな感情が出ても回復が早くなった。」と効果を実感されていました。

TMS30回終了時は調子も良く、「落ち込みは強くない。雨でも調子を崩さない。希死念慮もなくなった。文字が読めるようになり、家事を手伝えるようになり、趣味も楽しめるようになった。」と、

当初の臥床がちな状態から活動ができるようになり、希死念慮なども含め、主訴の改善が認められました。

治療後のフォローとしては、薬物療法のみで治療を行うため、TMS治療は終診となりました。

症例のまとめ

治療開始当初は発語も中々困難な様子で、奥様付き添いの元治療を行っていましたが、次第に発語が増え、お一人で来院できるようになり、

笑顔もみられるようになりました。入院経験もあるため症状の増悪や躁転に関して注意が必要でしたが、そのような事態が起こることなく、無事に30回の治療を終えることができました。

右低頻度刺激では躁転のリスクは低いと考えられており、双極性障害のうつ状態の治療選択肢として有効であることを確認できた症例になります。

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カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2022年10月10日

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