パニック障害とTMS治療

パニック障害にTMS治療は、「おそらく効果があるだろう」といわれています。

しかしながらパニック障害は抗うつ剤の反応がよい病気ですので、まずは抗うつ剤による治療を考えるべきです。

このため研究報告も少ないですが、パニック障害にもTMSの効果は示唆されています。

パニック障害とうつ病を合併している場合は、TMSは治療選択肢のひとつと思われます。

ここではパニック障害についてみていき、お薬に頼らないTMS治療の可能性についてお伝えしていきたいと思います。

パニック障害とは?

パニック障害の症状の特徴をイラストにして表現しました。

パニック障害とは、パニック発作と呼ばれる発作的な不安を特徴とする病気になります。

その背景には何らかの脳の機能的異常があると考えられており、脳の誤作動が原因となって急激な不安が引き起こされます。

パニック障害の症状

そのような病気ですので、「逃げられない状況」や「助けを得られない状況」では緊張が高まり、不安が誘発されやすくなります。

このような状況に対する恐怖を、「広場恐怖」と呼びます。

そのような苦手な状況が近づくと、また同じように不安になってしまうのではないかという「予期不安」が高まり、そして「回避行動」をとってしまうことで不安の悪循環が生まれてしまいます。

このようにパニック障害は、

  • 予期不安
  • 広場恐怖
  • 回避行動

を伴いやすい病気になります。

パニック障害は脳の機能的異常

ですがその本質は「脳の機能的異常」にありますので、診断にあたっては「きっかけも何もないところでの不安発作があるかどうか」が重要になります。

典型的な例として、睡眠発作が挙げられます。就寝中に急に不安になって飛び起きてしまうような症状で、およそパニック障害の3人に1人が経験するともいわれています。

このような状況が続くと生活への影響が強まり、うつ症状を合併してしまうことも少なくありません。

パニック障害にうつ症状がみられている場合は、TMS治療は治療選択肢の一つとなります。

パニック障害について詳しくは、パニック障害のページ(こころみ医学)をご覧ください。

パニック障害に対するrTMS治療方法と費用

パニック障害やPTSDは、うつ症状が伴えばTMS治療も選択肢となります。

rTMS治療は、うつ症状を伴うパニック障害に対する治療効果を期待していくべきです。

純粋なパニック障害の場合は、お薬が使えない理由がある場合を除いては、まずは薬物療法を検討すべきでしょう。

パニック障害のTMS治療プラン

パニック障害についてのTMS治療としては、大きく2つの方法が行われます。

  • 左背外側前頭前野への高頻度刺激
  • 右背外側前頭前野への低頻度刺激

エビデンスとしては、右低頻度刺激によってパニック症状が軽減されたという報告が最も高いです。

左高頻度刺激でも効果があったとする報告も認められます。

うつ症状に対しては左高頻度刺激が行われることが多く、金銭的な負担も少なくて済みます。このため左高頻度刺激から始めることが多いです。

このようにパニック障害ではうつ症状の治療とあわせて行い、病状をみながら総合的に判断して治療をすすめていきます。その経過によっては、刺激方法を変更・工夫していきます。

当院でのTMS治療費と症例

当院の治療費については、機械の使用時間をもとに設定しております。

  • 左高頻度刺激:10分枠 4,950円(税込)※継続3,300円~
  • 右低頻度刺激:20分枠 8,250円(税込)※継続6,600円~
  • 右低頻度刺激:30分枠 13,200円(税込)※継続9,900円~

治療費について詳しくは、TMS治療費のページをご覧ください。

当院でのTMS症例(パニック障害)

パニック障害でのTMSのエビデンス

パニック障害とTMS治療に関するエビデンスが高い論文をご紹介します。

論文について詳しくは、【大うつ病性障害を合併するパニック障害治療に対するDLPFCへのrTMSのランダム化比較試験】をご覧ください。

こちらの論文によれば、うつ病とパニック障害を合併した場合に右DLPFC低頻度刺激を行うことで、パニック障害は4週で有意に改善したと報告されています。

その一方でうつ病は8週で効果がみられ、6か月後のフォローアップではどちらも治療効果が持続していたと報告されています。

パニック障害とうつ病を合併する13人の治療抵抗性患者に対して左DLPFC高頻度刺激を行った報告があります。

こちらではそれぞれの症状の評価スケールが38%(PDSS)と40%(HDRS)の改善を認めています。

【パニック障害とうつ病を合併患者での高頻度rTMSの効果】

パニック障害での薬物療法

パニック障害の治療としては、抗うつ剤を主とした薬物治療が基本になります。急性不安はお薬の反応が良い場合が多く、SSRIをはじめとした抗うつ剤を使っていきます。

急性不安が主体の場合は、まずはお薬の治療が適切です。

正式に適応が認められているお薬としては、

  • パキシル(一般名:パロキセチン)
  • ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)

となりますが、実際には患者さんごとにあった抗うつ剤を見つけていきます。

そして直接的に不安を和らげるお薬として、抗不安薬を対症療法として使っていくことが多いです。

治療の考え方

イメージ写真

急な不安が落ち着くことで、苦手としていた状況への抵抗も薄れる方もいらっしゃいます。「逃げられない状況」に対する広場恐怖が残ってしまう場合は、お薬の力を借りながら行動療法を進めていきます。

少しずつ行動しながら成功体験を重ねていくことで認知が少しずつ変化していき、苦手意識が和らいでいきます。

パニック障害ではうつ症状や慢性不安を伴う場合があり、そのようなときにはTMS治療も選択肢に入ります。

副作用でなかなかお薬の服用ができない場合や、お薬に対する反応が良くない場合には、TMS治療は治療手段のひとつとなります。

TMS治療をご検討の方へ

TMS治療の効果の強みと、向いている患者様をまとめた図表

パニック障害はお薬による治療効果が期待しやすい病気です。

しかしながらうつ症状を合併していたり、お薬を使えない事情がある場合は、TMSも治療選択肢となります。

このように適切なTMS治療を行っていくためには、TMS治療の知見はもちろんのこと、前提となる心の治療経験が非常に大切です。

当院には10名の精神科医が在籍していますが、両方に精通した医師4名のみ(2021年9月現在)が担当させていただきます。TMSは治療選択肢のひとつとして、患者さんの立場に立ってご相談させていただきます。

TMS治療にご興味お持ちの方は、東京横浜TMSクリニックにご相談ください。

大澤 亮太

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了