TMS治療費の価格相場

TMS治療費の相場についてイメージするイラストになります。

TMS治療を受けるに当たって、

「費用はどの程度かかるの?」

「保険を適用することはできるの?」

治療を検討する以上は、費用も大切です。

自由診療のTMSクリニックでは、金額が治療の質を反映しません。その一方で、極端に安価なところは理由があったりもします。

ここではTMS治療の費用に関わるご疑問にお答えしていきます。

アメリカのTMS治療費用の相場

アメリカのTMS治療費の相場をまとめました。

うつ病治療法としてのFDA承認が2008年に認められた米国では、入院・外来問わず、TMS治療をカバーする民間保険会社を用いるのが基本です。

ただし保険を使用しない場合の治療費は、TMSセッション1回当り(15~30分)の費用はクリニックにもよりますが、おおよそ$300~$600前後と言われています。

非常に良心的で安いクリニックでも、下限は$150ほどです。

1ドルを105円と想定すると、一般的な価格帯は31,500円くらいから63,000円程度となり、最安値が15,750円となりますので、無保険だと一般の人はなかなか手を出しづらい金額です。

【アメリカでの1セッション当りの費用帯相場】

31,500円~63,000円

【アメリカでの1セッション当りの最安値帯相場】

15,750円

また、セッションは単発ではなく、20~30回と繰り返して行いますので、30回実施した場合の総額は下記の通りとなります。

【アメリカでの30セッション当りの相場帯(参考)】

945,000円~1,890,000円

【アメリカでの30セッション当りの最安値帯(参考)】

472,500円

何十年も悩まされてきたうつから解放されるなら、「法外に高いというわけでもない」と感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、誰もが気軽に出せる金額ではないですね。

TMS治療に限らず、アメリカの医療費は非常に高額です。

そもそもTMS治療がカバーされる民間保険は高所得者でしか入ることができず、TMS治療は事実上、アメリカではお金に余裕がある方の治療となっています。

日本のTMS治療費用の相場

2019年6月に保険適用となった日本のTMS治療ですが、それ以前の自由診療を行っていた一部のクリニックでは、アメリカの上限相場と同レベルの金額帯で治療を提供していました。

ときおりTMS治療を受けられた患者さんから、「高額ローンを組んで治療しました」という話を伺う機会がありました。

当時は国内に相場がなかったわけですので、米国の相場で考えれば、適切なTMS治療であれば法外に高いというわけでもなかったのかもしれません。

日本でも2019年6月に保険適応が認められ、保険が使えるようになりました。

ただし保険を使うには、下記のような条件をクリアする必要があるのです。

TMS治療の保険適用の条件

TMS治療の保険適応の条件をまとめました。
  • 成人であること
  • うつ病と診断されていること
  • 過去に抗うつ剤の薬物治療を受けていること
  • 薬物治療で十分な効果が認められなかったこと
  • 中等度うつ病(精神病症状や希死念慮を伴う重症うつ病はNG)
  • 2ヶ月程度の入院が可能であること(さらに入院までの待機期間あり)
  • 決められた機器とプロトコールで行うこと(6週間以内に30回)

このように保険の適用には非常に厳しい条件がもうけられていますので、実際にTMS治療を希望されて対象となる方は2割にも満たないと考えられています。

保険でのTMS治療の費用

保険診療での費用は、

  • 診療に関わる自己負担(ほとんどの場合、高額療養費制度対象)
  • 差額ベッド代(0~3万程度)
  • 日常生活費

となります。

高額療養費制度による医療費の上限額は年収によっても異なります。

TMS治療の保険診療の高額療養費の上限を一覧表にしました。

保険でのTMS治療は6週間にわたるため、2か月分の高額療養費が適応となります。

ですから、7~50万程度が医療費負担となります。

このため、1セッション当りの自己負担額は2,333円~16,000円程度となります。

日本人の平均年収は436万円になりますので、2か月分の高額療養費の上限が16万程度となります。ですから、1セッション当たりの自己負担額は5,333円となります。

【保険適用の場合の自己負担額(参考)】

5,000円~16,000円/回

【保険適用TMS治療30回実施の場合の自己負担総額(参考)】

150,000円~480,000円/回

「自由診療」か「保険診療」か

TMS治療の保険診療と自由診療の違いは、以下のようになります。

TMS治療の自由診療と保険診療の違いをまとめました。

クリニックでの自由診療TMS治療が向いている方

TMS治療をクリニックで受けることが向いている方をご紹介します。
  • 抗うつ剤の薬物治療を受けた経験がない方
  • 軽度のうつ病で苦しんでいる方
  • 入院治療が現実的な選択肢に入らない方
  • 週5回での治療は困難な方
  • すぐに治療を開始したい方

このような方は、クリニックでのTMS治療が向いています。

当院のような外来クリニックに、空き時間に通院して頂く形で治療をおこなっていきます。

一度の治療に要する時間は30分以内となり、毎回のセッション後は即座に日常生活に戻って頂くことができるため、忙しい方には最適な選択肢といえるでしょう。

また自由診療では、治療方法のルールに縛られることなく、効果が期待できる病状に対して欧米の新しいTMS治療(短期集中治療など)が行えます。

また保険診療のTMSは入院治療となることが多く、すぐに治療が開始できないことが多いです。

加えて、自由診療の外来クリニックでは、比較的リーズナブルな金額でTMS治療を受けられるケースが出て来ています。

保険診療と自由診療

自由診療でのTMS治療の費用

お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、すでに相場としては日本ではアメリカよりもはるかに低費用でTMS治療が受けられるようになっています。

そして、リーズナブルなクリニックでは、実は保険診療とさほど変わらない金額で受けられるようになってきているのです。

【外来クリニックの1セッション当りの費用相場】

4,000円~12,000円/回

【外来クリニックでrTMS治療30回実施の場合】

120,000円~360,000円

アメリカの相場を考えれば、自己負担を3割としても最安値で4,725円、通常は9,450円~18,900円ほどになるかと思います。

日本では、自由診療のクリニックでもかなりリーズナブル、かつ柔軟にTMS治療をうけることができるのです。

そこには様々な理由が絡み合っていて、ダンピングされすぎてしまった感は否めないですが、これが紛れもない「事実」なのです。

※この相場より安価なところは恐らく理由がありますので、よくご確認ください。

クリニック間での費用に幅がある理由とは?

TMS治療費に幅がある理由をご説明するイラストです。

自由診療といえど、ある程度は標準化された方法に添って治療を進めるため、通常の精神科クリニックであれば、効果や方法に大きな差はありません。

つまり、「治療費が高いから、治療の質もいい」「治療費が安いから、治療の質が悪い」とはならないのです。

では、自由診療で治療費に幅があるのは、どうしてなのでしょうか。

ビジネス意識の強い医療機関の存在

理由のひとつとして、TMS治療が比較的まだ新しく、治療内容や効果に関しての認知度が低いことがあげられます。

日本国内に広まっているとはいっても、薬物治療と比較すると、TMS治療を知らない方はまだまだ多いでしょう。

そのため、脳の検査と合わせて最新のイメージを作り、高単価で利益を確保する医療機関もあります。

 

その一方で、コストを削減してリーズナブルな単価で提供している医療機関もあります。

そのコスト削減が合理的なものであればよいのですが、治療機器や消耗品、人件費といった本質的な部分になりますと、TMS治療の効果が期待できなくなるかもしれません。

それだけでなく、薄利多売で適応外の患者さんも関係なしにTMS治療に誘導するクリニックもあり、そもそも正しい治療効果が期待できません。

このように、リーズナブルな医療機関であっても治療内容は様々です。

ただ心の病気で苦しんでいる患者さんは経済的にも余裕がないことが多く、良心的な医療機関ではなるべくリーズナブルな金額設定にしていることが多いです。

「自由診療」の医療機関は信頼性が低い?

大変心苦しいですが、営利的な側面が強い医療機関が、患者さんだけでなく専門家にも不信感を与えていることは事実です。

ですがビジネス面を優先させている医療機関は、本来はTMS治療の適用ではない病気に対しても、「この病気にもTMS治療は効果がある!」と宣伝していて、適応外も含めた症例数で「〇千症例・〇万セッション」といったように誇示しています。

そして「治療効果が8~9割」と明らかに根拠のない治療成績を誇示していたり、裏側も知る私たちとしてはビックリすることばかりです。

そのため、今後TMS治療に対しての正しい知識が広まるにつれて、患者さん側が「この医療機関はおかしいな」と判断できる日も来るでしょう。

医師として懸念している点は、「自由診療のTMS治療は信頼できない」とひとくくりにされてしまい、必要な方にTMS治療が届かなくなることです。

当院のように保険診療を実施できないクリニックであっても、本当に役に立つTMS治療を広げていこうと考えているところも数多くあります。

潜在的にTMS治療を必要としている方は、日本全国にいらっしゃいます。

当院は、私たちと同じような志を持ち、医学的なエビデンスに基づく治療をされている他医療機関様と共に、本当に治療を必要としている方にしっかり寄り添うTMS治療を実践する先駆けとなることを心がけています。

私たちの法人はビジネスを主目的とせず、以下のポリシーをもってTMS治療に取り組んでいます。ですので、トータルの診療の質と費用のバランスを追求し、できる限り患者さんに還元しています。

TMS治療をご検討の患者様は、トータルで安心いただける当院をご検討いただけますと幸いです。

当院のポリシー
当院のTMS治療費
大澤 亮太

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了