TMS治療と薬物療法

心の病気の治療としては、お薬がスタンダードな治療法となっています。

磁気刺激によるTMS治療は、新しい治療法としてその有効性が認められてきています。

ここではTMS治療と薬物療法を比較し、TMS治療に向いているケースをご紹介したいと思います。

TMS療法と薬物療法、どちらも大切な治療法

TMS治療と薬物療法

TMS治療と薬物療法、どちらも心の病を治すために大切な治療方法になります。

残念ながら万人が必ず良くなる治療というわけではありませんが、適切な治療を組み合わせることで多くの方が本来の生活を取り戻すことができます。

rTMS療法を薬物療法と比較したメリットとしては、以下の4つがあげられます。

rTMS療法を薬物療法と比較したメリット

  • 治療期間が短くなる可能性があること
  • 治療抵抗性うつ病の方に対しても一定の効果が見られること
  • 薬物療法と比べ副作用が少ないこと
  • 薬物療法と比べて再発率が低いこと

その一方でデメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

rTMS療法を薬物療法と比較したデメリット

  • 再発予防の方法が確立していないこと
  • 治療開始時に頻回の通院が必要になること
  • 自費診療が中心となること

TMS治療と薬物治療の両方を組み合わせることで治療効果も高まりますので、二者択一の治療というわけでもありません。

TMS治療を導入することにより、お薬の量を減らせることも少なくありません。

TMS治療と薬物療法、それぞれのメリットを整理しました。

TMS治療のメリット・薬物療法のデメリット

TMS治療と薬物療法

TMS治療は頭部に磁気を発生させる器具をあて、脳の特定の場所を効率的に電気刺激する治療になります。

治療期間の短さ

TMS治療は薬物療法に比べて、治療期間が短く済む可能性が高いです。

少なくとも週2回以上の通院が必要になりますが、およそ2か月までの期間に病状の改善を目指す治療になります。

一方で薬物療法は、毎日数錠のお薬を服用し続ける必要があり、抗うつ剤であれば1か月ほどかけて効果をみていきます。

ですから治療期間として、rTMS治療のほうが短く改善が期待できることがあります。

お薬とは異なるメカニズム

またお薬での治療での効果が乏しい場合でも、rTMS治療では3~4割程度の効果が期待できます。

初めのお薬の効果が悪いと、変更してもお薬が効果を発揮する可能性は少しずつ低下してしまいます。しかしながらTMS治療は、お薬と異なるメカニズムで効果を発揮します。

このためお薬が効かなかった方にもTMS治療の効果が期待でき、治療選択肢としてrTMS治療が加わることで、より多くの方を治療することができます。

副作用の少なさ

TMS治療と薬物療法の副作用の比較を図にしました。

さらにTMS治療は、副作用がほとんどない点でも優れています。

ごく稀にけいれんなどの大きな副作用が出る場合もありますが、ほとんどは治療時に頭皮に痛みを感じる程度で済みます。

薬物療法では内服したお薬が、脳だけでなく全身をめぐるため、お薬ごとに様々な副作用をきたします。

TMS治療では脳の局所を刺激するため、副作用は非常に少なく済みます。

再発率の低さ

そしてrTMS療法は、薬物療法に比べて再発率が低いと報告されていて、これは臨床実感としても一致します。

rTMSによる神経変化が、一定期間しっかりと行うことで効果が持続すると考えられています。

しかしながらデータは十分でなく、最適な再発予防の方法は確立されていません。

再発リスクが高い場合、

  • メンテナンスで週1回程度のrTMS治療を継続
  • 調子が悪くなったらすぐにrTMS治療を実施
  • 再発予防のためのお薬を継続していく

といったことで、再発率は低下する可能性が高いと考えられています。

TMS治療のデメリット・薬物療法のメリット

TMS治療と薬物療法

心の病気に対する薬物療法は、1950年代から研究が始まりました。

歴史が長く知見も多いため、特定の病状に対して処方すべき薬について分かっていることが多く、実際に症状が良くなった方も多くいます。

現在でも新しい薬が開発されていますが、治療方法や理論もある程度確立されており、効果を得ることが期待できます。

また再発予防も薬を継続することで可能となります。

治療の歴史が浅い

TMS治療は、実際に治療に向けた研究が始まったのは1985年になります。

現在も研究が進められていますが、知見の積み重ねは薬物療法よりは少ないため、まだわかっていないことも少なくない治療方法です。

再発予防の方法が確立していない

特に再発予防については、rTMS治療はその手段が十分に開発されてなく、再発を防ぐ治療という点では薬物治療より方法が確立されていません

薬物療法であれば、効果があったお薬をそのまま継続するだけで再発予防が可能となります。ですから薬物療法は、良くなった後は月に1度程度の受診で、長期的な治療も可能です。

その一方でrTMS療法には最適な答えはみつかっておらず、当院では患者様の病状にあわせてご相談させていただいております。

通院負担が大きい

また治療自体の負荷が大きい点も、薬物療法と比較したデメリットになります。

基本的に週に3~5回ほどの通院が必要となりますので、お仕事などがある方には負担が大きいかもしれません。

当院では特殊な刺激方法のみ週2回からの治療をご提案はできますが、週1回での治療は効果が期待できないためお断わりさせていただいています。

また、薬物療法は基本的に国民健康保険の適用対象となっていますが、TMS治療は保険適応では入院での治療となることが多く、自費診療が中心となります。

この様な背景から、rTMS治療はお薬の次の治療手段という位置づけになっています。

治療選択肢としてのTMS治療を

TMS治療と薬物療法

TMS治療は費用が高額となることが多く、

  • 薬物療法で効果が薄かった方
  • お薬に対して副作用が強い方
  • 事情があってお薬の治療が困難な方

に対して行うというのが、現状の主流となっています。

当院では自由診療の良さを生かして、

  • お薬に頼らない治療をお望みの方
  • なるべく早く治療効果を得たい方
  • 減薬をご希望の方

に対しての治療を行っています。

これまで培ってきた臨床経験を生かし、TMS治療のエビデンスを大切にしながらも、実臨床でのメリットをうまく治療に取り入れていきたいと考えています。

どちらの治療方法にも一定のメリットとデメリットがありますので、あくまでTMS治療は選択肢のひとつになります。

どのような方法で治療を進めていくのがよいか、心の臨床経験を積んだ医師がご相談させていただきます。

TMS治療をご検討の方へ

TMS治療の効果の強みと、向いている患者様をまとめた図表になります。

適切なTMS治療を行っていくためには、TMS治療の知見はもちろんのこと、前提となる心の治療経験が非常に大切です。

当院には10名の精神科医が在籍していますが、両方に精通した医師4名のみ(2021年9月現在)が担当させていただきます。

TMSは治療選択肢のひとつとして、患者さんの立場にたってご相談させていただきます。

TMS治療にご興味お持ちの方は、東京横浜TMSクリニックにご相談ください。

大澤 亮太

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了