TMS治療の流れ

TMSの治療イラスト

TMS治療を行っていくためには、適切な刺激部位と強度を見つけていく必要があります。

当院では、欧米でも標準的に行われているBeamF3法に基づいて刺激部位を決定し、適切な刺激強度を決定しています。

初回の設定には30分程度のお時間を確保させていただいています。

ここでは、TMS治療の実施の流れをご説明させていただきます。

はじめに

TMS治療の施術の流れをわかりやすく説明しました。

以下では、TMS治療の流れについて詳しく説明していきます。

1.施術の準備

専用チェアーに座り、頭部に白のキャップをかぶっていただき、刺激部位と強度を同定します。

初回治療の流れを簡潔に知りたい方は、「初回TMS治療の流れについて」をお読みください。

2.刺激部位の決定(初回のみ)

TMS治療の効果を最大化にするため、最適な刺激部位を同定します。

刺激する部位は基本的に、背外側前頭前野(脳の部位のうち、両目の上の外側全体)になります。
※強迫性障害ではターゲットが異なりますが、ここではうつや不安をイメージしてお伝えします。

その位置は大体決まっていますが、個人差があります。

そのため初回設定は、患者さんごとに慎重に設定する必要があります。

正確な位置での刺激が重要

最適な部位で刺激することがが重要ですので、ほとんどの医療機関で行っている5cm法を当院では行いません。

頭部の計測に基づいて、アルゴリズムにより最適な刺激部位を同定するBeamF3法を行っています。

この方法は海外での標準法となっており、MRIを利用した同定方法と遜色ない結果であることが示されており、人種や年齢に関係がなく適応することができます。
【うつ病のrTMSのための複数のDLPFCターゲティング戦略の解剖学的およびfMRIネットワークでの比較】

とくに青年期は頭部の大きさも変化するため、こちらの方法が推奨されています。
【前頭前野TMSに対するF3位置を特定するための効果的で正確な新しい方法】

頭部のキャップの上から、メジャーで計測させていただきます。いくつかの計測結果をもとにアルゴリズムに基づいて計算し、rTMS刺激を行う背外側前頭前野(DLPFC:dorsolateral prefrontal cortex)の場所を同定します。

日本人と欧米人の違い

TMS治療は欧米を中心に治療法が普及したため、日本人に対する違いが気になられるかもしれません。

アジア人は一般的に、頭蓋骨が欧米人より厚いといわれています。

このため刺激強度を欧米人より強くする必要があり、3~4割程強い刺激が必要といわれています。

そのために副作用が多少出やすく、痛みが強くてTMS治療が導入できない方も欧米人より多いといわれています。

頭の形状の違いもありますが、上述したように5cm法ではなくBeamF3法を用いることで、欧米人と変わりなく効果のある刺激部位を特定することができます。

左利きと右利きは違う?

脳の言語中枢は、左右のどちらかにあります。

言語中枢がある側を優位半球とよび、右利きの人はほとんどが左側で、左利きの人も多くは左側ですが1/3ほどは右側といわれています。

TMS治療では左側と右側で刺激方法を考えていきますが、利き手による効果の違いはないといわれています。

うつ病に対するTMS治療では、左利きの人の方が効果的であったという報告がなされています。

【大うつ病における左利きであることとrTMSの反応】

3.刺激強度の決定(初回のみ)

刺激部位が同定できたら、つぎは適切な刺激強度を測定します。

刺激強度は、弱すぎると効果は期待しにくくなりますし、強すぎると副作用リスクが高まることが懸念されます。

治療効果としては強度をあげすぎても一定となってしまうので、適切な刺激強度での治療が重要です。

運動野で刺激強度を決定

 

そのためには、親指を動かすときに使う脳の部位である運動野(motor cortex)の場所を見極めます。なぜ運動野なのかというと、

  • 目で見て刺激反応がわかる
  • 刺激への反応(閾値)が一番低い強度であらわれる

こういった理由になります。

 

肉眼でみて親指がピクっとする動きがわかりますので、少しずつ刺激強度をあげていき、50%程度の反応がある強度(rMT:resting motor threshold)を見つけます。

10回の刺激で5回の反応がみられることが推奨されています。

【確実に評価するために必要なTMS刺激数】

電極を付けた場合は、MEP(運動誘発電位:50μV以上50%)から刺激強度を決めます。

適切な刺激強度とは?

脳(大脳皮質)のなかで、運動野がもっとも弱い刺激で反応するといわれています。

このため運動野で50%が反応する数値をrMT(resting Motor threshold:安静時閾値)と呼んで、これを基準に刺激強度を決定します。

このためうつ病などのDLPFCは、それよりも強い120%を目標に治療を行っていきます。

痛みなどに慣れていただくため、当院では90%程度の刺激強度で初回を試していただきます。

その後は患者様のペースにあわせて、なるべく早く100%以上の強度としていきます。

治療効果を刺激場所と強度での治療効果を網羅的に調べた研究では、rMT100%以上の方が効果がまさっていました。
【治療抵抗性うつ病治療のための最適なrTSMパラメーターの決定: ランダム化比較試験のネットワークメタアナリシス】

4.治療

治療中、患者様は専用チェアーに座っているだけです。

治療の際には頭部にコイルを固定しますが、位置がずれないように少し押し込むように当てます。

頭をなるべく動かさずに、楽にしていてください。

TMS刺激中の注意点

刺激強度を探しているときには、刺激に伴って痛みが出てくることは非常に少ないです。

刺激を行っているときは、刺激音(ペンでコツコツたたくような感覚)が生じます。

眠ってしまうと効果が弱まってしまうので、刺激中は眠らないように気を付けてください。

TMS治療の効果を高める10ポイント

刺激後の副作用

刺激中または終了後に、痛み、頭痛、顔や目のふるえ、歯の違和感、不快感などがでることがありますが、施術を重ねる事で少しずつ消えていくことが多いです。

痛みは筋肉由来になりますので、スタッフにお声かけいただければ、治療効果を損なわない範囲で微調整します。

所要時間は刺激方法によって異なりますが、当院のiTBSでは3~6分程度です。一連の治療は10分程度で終了します。

TMS治療の副作用

TMS治療をご検討の方へ

TMS治療の効果の強みと、向いている患者様をまとめた図表になります。

適切なTMS治療を行っていくためには、TMS治療の知見はもちろんのこと、前提となる心の治療経験が非常に大切です。

当院には10名の精神科医が在籍していますが、両方に精通した医師4名のみ(2021年9月現在)が担当させていただきます。

TMSは治療選択肢のひとつとして、患者さんの立場にたってご相談させていただきます。

TMS治療にご興味お持ちの方は、東京横浜TMSクリニックにご相談ください。

大澤 亮太

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了