治療抵抗性うつ病とTMS治療

TMS治療は、お薬とは異なるメカニズムで抗うつ効果が期待できる治療法になります。

抗うつ剤の効果は、変更を重ねるごとにうすれてしまい、副作用のリスクは増してしまいます。

このため日本でも、中等度以上のうつ病で抗うつ剤での治療効果が乏しかった場合に、保険適応が認められています。

抗うつ剤の効果が不十分な場合にも、TMS治療によってさらなる改善が期待できます。

治療抵抗性うつ病とは?

治療抵抗性うつ病とは?
  • 抗うつ剤を使ってもよくならない
  • 良くはなったけど以前とは違う

うつ病を治療していく中で、薬物療法や心理療法だけでは限界となってしまうことがあります。

そんな時には、

  • 双極性障害など診断の見直し

も考えていく必要がありますが、抗うつ剤との相性が悪い場合もあります。

従来のお薬や心理療法を試行錯誤することで、うつ病の7割は良くなるといわれていますが、残りの3割は本来の調子を取り戻すのに時間がかかってしまいます

治療抵抗性うつ病は、抗うつ剤を十分量で十分期間(1~2か月)使っても寛解(本来の調子)とならないことを意味します。

臨床研究や治験では、1剤の抗うつ剤で効果が不十分な場合を治療抵抗性うつ病と呼びますが、2~4剤が無効の場合とされることもあります。

何とか仕事ができていても

  • 休日は寝たっきりになってしまう
  • うまく頭が働かずに以前より集中力が落ちている

このような勤務中の生産性の低下(presenteeism)が残っている状態は、本来の調子を取り戻せているとは言えません。

このような場合は、TMSが治療選択肢として効果が期待できます。

うつ病についてのTMS治療については、以下をお読みください。

うつ病とTMS治療

回数を重ねるごとに薬の治療効果が期待しにくくなる

回数を重ねるごとに薬の治療効果が期待しにくくなる

うつ病の治療では、STAR*D試験という有名な研究があります。

こちらはアメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)が中心となり、7年間にわたって41施設で4000人以上の患者さんの治療を研究したものになります。、【NIMHのSTAR*Dページ】

こちらの研究では、中等度以上のうつ病の方(2876人)を対象に、まずは日本では未発売のシタロプラムという抗うつ剤の単剤を治療を行い、うまくいかなかった場合に異なる治療オプションを追加で3段階おこなっています。

  • 抗うつ剤の変更
  • リチウムなどの増強療法
  • 認知行動療法
  • MAO阻害剤やカルフォルニアロケット療法

などの治療を行っていき、治療経過を観察しました。

その結果は以下のように、ステップを重ねるごとに治療効果が期待しにくくなっていきます。

回数を重ねるごとに薬の治療効果が期待しにくくなる

初めの抗うつ剤で3人に1人がよくなり、効果が乏しかった場合に2つ目の治療を行うと、4人に1人が良くなります。

3回目、4回目と治療を重ねていく中で、全部で67%程度が寛解となります。

またこの治療の過程で、副作用によって治療を中止しなければならない方は当然ながら、増えていきます。

回数を重ねるごとに薬の治療効果が期待しにくくなる

このように、副作用は治療を重ねるごとに増してしまいます。

お薬による治療は、回数を重ねるごとに効果が期待しにくくなり、副作用で治療継続できなくなることが増えていくのです。

このことから、日本では1剤の抗うつ剤で効果が乏しい場合に、TMS治療が保険適応(方法が限られて入院治療が基本)となっています。

TMS治療は薬とは異なるメカニズム

TMS治療は、このようなお薬での治療に対する反応が乏しい場合でも、3~5割ほどに効果が期待できると報告されています。

お薬が効果があったかどうかによらず、効果が期待できる治療法になります。

先ほどのSTAR*Dの結果と比較すると、TMS治療はお薬による治療と、少なくとも同等の効果が期待できるといえます。

実際の臨床では、プラセボや通院でのかかわりなどもあわせて、さらに治療効果が期待できます。

抗うつ剤との併用も

お薬による治療は、脳の神経と神経の橋渡しをしている神経伝達物資の働きを調整することで効果を期待しています。

TMS治療はお薬とメカニズムが全く異なり、脳にピンポイントで働きことで、その働きを強めたり弱めたりすることで効果を期待していきます。

このように異なるメカニズムでの効果ですので、併用することでさらなる効果が期待できるといわれています。

【治療抵抗性うつ病に対する片側および両側rTMS:20年にわたるランダム化比較試験のメタアナリシス】

希死念慮を軽減する可能性あり

うつ病において、TMS治療は自殺念慮を軽減させる可能性が示唆されています。
【うつ病での希死念慮を減らすためのTMSの有効性:メタアナリシス】

治療抵抗性うつ病では、その苦しみの深さから希死念慮が強まることも多く、軽減できることは治療的に大きな意味があります。

これまでの研究をまとめた論文では、治療抵抗性うつ病でも希死念慮の軽減を認めていましたが、ランダム化比較試験にすると有意差までは認められませんでした。
【治療抵抗性うつ病における希死念慮に対するrTMSの効果:メタアナリシス】

このようにTMS治療は、希死念慮という生きづらさの軽減ができる可能性があります。

TMS治療をご検討の方へ

TMS治療をご検討の方へ

TMS治療は、治療抵抗性うつ病に対する治療効果が期待できます。

当院には10名の精神科医が在籍していますが、両方に精通した医師4名のみ(2021年9月現在)が担当させていただきます。

TMSは治療選択肢のひとつとして、患者さんの立場に立ってご相談させていただきます。

TMS治療にご興味お持ちの方は、東京横浜TMSクリニックにご相談ください

大澤 亮太

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了