治療抵抗性うつ病に対する片側および両側のrTMS:20年以上にわたるランダム化比較試験のメタアナリシス

こちらの論文は、

のページに引用しています。

抗うつ剤の併用の方が効果あり

こちらの論文は、治療抵抗性うつ病に対するTMS治療の効果を検証した報告になります。

結論として、治療抵抗性うつ病に対して偽刺激とくらべて明らかに治療効果が認められ、その効果量は中程度となっています。

このなかで、抗うつ剤の併用をしているかどうかで比較した場合に、併用したほうが治療成績が良かったことが示されています。

TMS治療と抗うつ剤は異なるメカニズムによる効果が期待できるため、併用することで治療効果が増強されることが示唆されます。

実際の臨床でも、抗うつ剤での治療に全く反応しなかったにもかかわらず、TMS治療で反応は認められたため、その後に抗うつ剤を併用したら寛解にいたったケースもありました。

このようにTMS治療では、抗うつ剤との併用することで効果を高められる可能性があります。

論文のご紹介

治療抵抗性うつ病の片側・両側TMS治療のメタアナリシスをご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

うつ病患者の約35%は、適切な用量の抗うつ薬を2コース服用しても効果が得られず、治療抵抗性うつ病(TRD)は、患者やその家族、社会、医療システムに大きな影響を与える臨床上の大きな問題である。

本メタアナリシスでは、単極性TRD患者を対象に、片側および両側の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の抗うつ効果を評価した。

方法

rTMSと偽刺激を比較したランダム化比較試験で、2017年4月3日までに発表されたものを検索した。

主要アウトカムは、ハミルトンうつ病評価尺度を用いて測定したうつ病スコアの改善であった。

副次的アウトカムは、寛解率と反応率とした。2人の独立したレビュー著者が研究をスクリーニングし、データを抽出した。

結果

23件の研究が組み入れ基準を満たしていた。

うつ病スコアのメタ解析では、片側rTMSと偽刺激の間に3.36(95%信頼区間[CI]:1.85~4.88)の加重平均差(WMD)が認められた。

層別データによると、rTMSを抗うつ薬のアドオンとして使用した場合(WMD:3.64、95%CI:1.52-5.76)は、単独で使用した場合(WMD:2.47、95%CI:0.90-4.05)よりも効果が相対的に高いことが示された。

両側rTMSと偽刺激の間のWMDは2.67(95%CI:0.83-4.51)であり、この結果に貢献したすべての研究は、参加者が抗うつ薬を服用している間にrTMSを使用していた。

片側rTMSと偽刺激のプールされた寛解率と奏効率は、それぞれrTMSでは16.0%と25.1%、偽刺激では5.7%と11.0%であった。

両側rTMSと偽刺激のプールされた寛解率と奏効率は、それぞれrTMSで16.6%と25.4%、偽刺激で2.0%と6.8%であった。

結論

本研究は、rTMSが中等度の抗うつ効果を有することを示唆しており、単極性TRD患者の短期治療に有望であると思われる。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年6月5日

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