前頭前野へTMSを適用するためにF3位置を特定するための効率的かつ正確な新手法

こちらの論文は、

のページに引用しています。

BeamF3法がDLPFCを正確に同定

こちらの論文は、うつ病のターゲットであるDLPFCの刺激部位を同定する方法として、BeamF3法の有用性を示した報告になります。

DLPFCは、脳波を測定する際のF3の位置に相当しますが、これを測定して同定していくのは手間がかかり、またヒューマンエラーの可能性も高くなります。

BeamF3法では、3つの頭部の数値を測定することで、アルゴリズムに基づいてF3の位置を特定できます。

従来は5㎝法がとられてきましたが、BeamF3法が提唱されてからは、海外では標準的なターゲット同定方法となっています。

DLPFCはそれなりに大きいのですが、BeamF3法によってしっかりと刺激部位を同定することで、フォーカスのしっかりした8の字コイルが効果的に作用させることができます。

論文のご紹介

TMS治療のターゲットであるDLPFCはBeamF3法が最適に同定できます。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

アブストラクト

International 10-20 systemは、脳波(EEG)の電極を標準的に配置する方法である。

10-20 systemは、外部の頭蓋骨の位置とその下の皮質領域を相関させる。

このシステムは、4つの基本的な解剖学的ランドマーク間の円周と距離の一定の割合を使用することにより、患者の頭蓋骨サイズのばらつきを考慮している。

この10-20 systemは、近年、経頭蓋磁気刺激(TMS)の研究において、特定の皮質領域の位置を特定するために使用されている。

うつ病(およびある種の痛み)の治療では、TMSコイルを左背外側前頭前野(DLPFC)の上に配置することが多く、これは10-20 systemによって与えられたF3の位置に対応している。

しかし、10-20 systemの使用経験が少ないと、多くの測定と計算を行うのに非常に時間がかかる。

また、測定値が多ければ多いほど、ヒューマンエラーの可能性も高くなる。

このため、私たちは、頭蓋骨の3部位を測定するだけで、F3の位置を見つけることができる、よりシンプルで迅速な新しい方法を開発した。

この論文では、新しいF3位置測定システムの応用例を説明し、F3位置の計算に使用する公式を示し、10人の健康な成人のデータをまとめた。

International 10-20 systemとこの新しい方法の両方を使用した結果、新しい方法は十分に正確であると思われるが、この方法の有用性と潜在的な限界をより詳細に分析するためには、今後の調査が必要であろう。

このシステムは、前頭前野のコイル配置の最適な位置を見つけるための時間とトレーニングを殆ど必要とせず、10-20 EEG systemに比べてかなりの時間を節約することができる。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年7月27日

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