TMSを用いて皮質運動興奮性と一次運動皮質表象を確実に評価するために必要な刺激数:システマティックレビューとメタアナリシス

こちらの論文は、

のページに引用しています。

最低5回、基本的に10回の計測が必要

こちらの論文は、TMSを行うにあたって、その刺激強度の決定に必要なMEPを測定するのに必要な刺激数を調べたものになります。

どれくらいの強度で磁気刺激を行うのが適切かは、親指を動かすことに関係する運動野をTMS刺激することで決定します。

TMS刺激をしたときに50%程度の反応がある強度を、安静時運動閾値(rMT:resting motor threshold)と呼びます。

脳の刺激の反応はひとそれぞれで、日本人は一般的にrMTが高めといわれています。

この値をもとに実際の刺激強度を決定していくのですが、それを評価するのに必要なTMS刺激数を同定した論文になります。

最低5回の刺激は必要で、10回の刺激を行うことで安定した数字が確認できたという結論となり、当院でも10回刺激して5回の反応がある値をrMTと設定しています。

サマリーのご紹介

TMSでのMEP計測に必要な刺激数

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

経頭蓋磁気刺激(TMS)は、中枢神経系の構造と機能を評価するための非侵襲的な手段である。

現在の方法では、参加者の頭皮の標的領域を複数回刺激している。

TMS評価中に提供される刺激の数を減らせば、時間効率が改善され、被験者へ要求も減るだろう。

しかしそうすることで、この手法のセッション内またはセッション間における信頼性が損なわれる可能性もある。

そこで本研究の目的は、(i)単一の頭蓋部位における標的筋の皮質運動興奮性、および(ii)複数の頭蓋部位における標的筋の一次運動皮質表象の分布を確実に測定するために必要なTMS刺激の最小数を決定することであった。

方法

2015年5月以前に発表された診断信頼性の高い研究を特定するためにデータベース検索を行った。

2人の独立したレビュアーが、(i)単一の頭蓋部位における皮質運動興奮性、または(ii)複数の頭蓋部位にまたがる標的筋の皮質組織分布を測定するためにシングルパルスTMSを採用した研究からデータを抽出した。

アウトカムとして、運動誘発電位振幅、地図体積、地図活性部位の数および地図重心の位置が含まれていた。

結果

1つの頭蓋部位に送達された刺激の数を変化させた場合の信頼性を比較した研究のみが選ばれた。

セッション内の優れた運動誘発電位(MEP)振幅の信頼性(クラス内相関係数(ICC)=0.92、95%信頼区間0.87~0.95)を生み出すためには、最低でも5回の刺激が必要であった。

健常者の間で一貫したセッション間MEP振幅を達成するためには、10回の刺激が必要であった(ICC=0.89、95%信頼区間0.76~0.95)。

しかしながら、セッション間の信頼性は、参加者の特徴、セッション間の間隔および標的筋に影響された。

結論

マルチサイトTMSマッピングの信頼性については、さらなる調査が必要である。

1つのセッションを含むシングルサイトTMS調査では、信頼性の高いMEP記録の作成には5回の刺激が必要である。

複数のセッションを含むシングルサイト解析では、健康な参加者や上肢筋群の皮質運動興奮性を調査する場合には、10回の刺激が推奨される。

しかし、臨床集団や下肢を対象とした評価では、より多くの刺激が必要になるかもしれない。

最適なMEPのための刺激数

単一部位におけるMEP振幅のセッション内信頼性。ICC:クラス内相関係数

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年2月4日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日:

【2024年2月最新】東京のTMS治療クリニック24院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

目次 東京でのTMS治療 東京で安心できるTMSクリニック5選 東京でTMS治療を受けられるその他の16医療機関 TMS治療クリニックの選び方 東京横浜TMSクリニックについて 感染対策について 東京でのTMS治療 うつ… 続きを読む 【2024年2月最新】東京のTMS治療クリニック24院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

投稿日:

コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

臨床研究の概要 医療法人社団こころみ東京横浜TMSクリニックは、「コロナ後遺症に伴う不安抑うつ・認知機能障害に対する新規経頭蓋刺激療法(rTMS)による治療法開発に向けた多施設共同試験」を実施いたします。 新型コロナウイ… 続きを読む コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

「冬になると気分が落ち込む」「寒さでやる気が出ない」と、冬になるたびに変化するご自身の体調に戸惑っていませんか? 不調を感じているご本人や、ときには周囲からも「寒さが苦手なだけだろう」と思われがちな冬の不調。 実は、冬季… 続きを読む 冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日: