PTSDには右DLPFC低頻度
こちらの論文は、PTSDでの右DLPFCをターゲットにして、高頻度と低頻度の刺激方法の違いを検証した論文になります。
PTSDに対するTMS治療は、右DLPFCが治療ターゲットとして良さそうということは、これまでの研究でもわかってきました。
刺激方法として、低頻度刺激と高頻度刺激のどちらが良いかは、研究によって報告に差があります。
このため31名の患者さんを二重盲検化比較試験という形で精度が高い形で設計し、偽刺激群と比較して検証しています。
結果として、PTSDの症状に対しては右低頻度刺激の有効性が示されました。
右DLPFC高頻度刺激では、うつ症状の改善が示唆されています。
総合的にみると、PTSDのTMS治療としては右DLPFC低頻度刺激が適切と思われます。
論文のご紹介

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
目的
心的外傷後ストレス障害(PTSD)では、効果的な心理学的・薬理学的治療が行われているにもかかわらず、大きな未だ対処されていない負担が残されている。
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、非侵襲的な介入であり、PTSDの治療戦略として考えられている。
これまでのエビデンスでは、背外側前頭前野(DLPFC)、特に右DLPFCを標的としたrTMSが、PTSD症状の改善につながることが示唆されている。
しかし、最適な刺激パラメータはまだ決定されていない。
本研究では、民間人のPTSDを対象に、右DLPFCへの高頻度および低頻度rTMSの有効性を、ランダム化二重盲検偽刺激対照デザインを用いて検討する。
方法
右DLPFCを標的としたrTMSの2週間にわたる単施設ランダム化比較試験を行った。
19歳から70歳までのPTSDの民間人を募集し、被験者を1日1回の1Hz rTMS群、10Hz rTMS群、または偽刺激群に、盲検化した上で無作為に割り付けた。
主要評価項目は、Clinician Administered PTSD Scale-IV(CAPS-IV)の改善であった。
副次評価項目は、抑うつ症状および不安症状の変化であった。
結果
31名のPTSDの民間人を募集した。
1Hz治療を受けた患者のうち1名が一過性の自殺念慮を発症した。
解析の結果、CAPS-IVの症状は、1-Hz群では偽刺激群に比べて有意に改善したが(Hedges’ g=-1.07)、10-Hz群では改善しなかった。
これは不安や抑うつの総体症状の変化によるものではなかった。
10Hzの刺激は、偽刺激と比較して抑うつ症状を改善するように見えた。
結論
低頻度rTMSは民間人のPTSDの治療に有効である。
今回のデータは、PTSDに合併する抑うつ症状の治療において、右DLPFCへの高頻度rTMSが追加調査の価値があることを示唆している。