新型コロナ後遺症とは?TMS治療の可能性

最近では、新型コロナウイルス感染症の後遺症として、ブレインフォグや慢性疲労症候群などが話題にのぼることがあります。

新型コロナウイルス感染の第5波・6波では、感染者数が急激に増加し、それに伴い後遺症に悩まれる方が増えてきました

コロナ後遺症の症状として多い、「ブレインフォグ」や「慢性疲労症候群」に対して、TMS治療の効果が期待されています。

まだまだ手探りになりますが、根拠の乏しい効果をうたってTMS治療を行っている医療機関もでてきています。

そのような中で、新型コロナウイルス後遺症に対する診療ガイドラインが厚労省から公表されています。

ここではコロナ後遺症についてお伝えし、ガイドラインも踏まえましてTMS治療の可能性もお伝えしていきます。

※当法人では、3法人共同でのコロナ後遺症TMS治療探索プロジェクトに取り組んでいます。

新型コロナ後遺症とは?

コロナ後遺症とは?イラストで説明します。

新型コロナウイルス感染は、ウイルス感染の一つではありますが、その後遺症の多さが注目されています。

多くの方が時間経過の中で薄れていきますが、なかには半年~1年以上も症状が残ってしまう方もいらっしゃいます。

このような新型コロナ後遺症ですが、ロングコビット(long COVID)などとも呼ばれています。

その病態はひとつではなく、様々な病態が関係しているといわれています。ですから症状も個人差があり、心身様々な症状となります。

コロナ後遺症では脳の構造変化の報告あり

コロナ後遺症の病態については、まだまだわかっていないことばかりです。

イギリスのUKバイオバンクでは、ボランティア50万人の遺伝子情報や健康データが登録されていますが、コロナ後遺症の症状の方にMRIで分析した研究結果が報告されて注目をあびました。

こちらによれば、以下のような構造変化が報告されました。

  • 眼窩前頭皮質と海馬傍回での灰白質の厚さ・組織のコントラストの大幅な減少
  • 一次嗅皮質に機能接続領域の組織損傷マーカーの大きな変化
  • 全体的な脳サイズが大幅に減少

論文について詳しくは、【新型コロナウイルスは脳の構造変化に関連:UKバイオバンク】をご覧ください。

何らかの脳の構造変化が認められるということは、ターゲットや方法を工夫すれば、rTMS療法による改善の可能性も期待できると思われます。

人によって様々な原因と病態

コロナ後遺症は解明されていないことばかりで、その病態も様々と考えられています。

コロナ後遺症だと思っていたら、実は他の病気になっていたといったこともありますし、メンタル面での影響が大きな場合もあります。

このためコロナ後遺症には、心と体の両面からのアプローチが必要となります。

コロナ後遺症で考えられる病態としては、以下のような病態が考えられます。

  • 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)
  • 感染による状態(脳血管疾患・低酸素症・投薬の副作用)
  • 感染後の休止期脱毛症
  • 精神疾患(うつ病・ストレス性疾患)
  • 肺機能障害(肺線維症・器質化肺炎といった間質性肺炎)
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 何らかの直接的なウイルスの影響

よくある症状

コロナ後遺症によくある症状をイラストにしました。

それではコロナ後遺症によくある症状について、海外での研究をご紹介します。

47,910人の患者さんを含む15の研究を合わせて解析したものになります。
【COVID19の50以上の長期的影響:システマティックレビューとメタアナリシス】

よくある後遺症を7つ挙げると、以下のようになります。

  • 倦怠感:58%(95%CI 42–73)
  • 頭痛:44%(95%CI 13–78)
  • 注意障害:27%(95%CI 19–36)
  • 脱毛:25%(95%CI 17–34))
  • 呼吸困難:24%(95%CI 14–36)
  • 味覚消失:23%(95%CI 14–33)
  • 無嗅覚症:21%(95%CI 12–32)

なんらかの2週間を超える症状が認められた方は、実に80%にも上ると報告されています。

その他にも、

  • 肺疾患(咳・胸部不快感・肺線維症・SAS)
  • 心疾患(不整脈・心筋炎)
  • 精神疾患(うつ病・不安障害・強迫性障害・認知症)

などが認められています。とくに脱毛については、女性に多いと報告されていました。

コロナ後遺症の症状を海外論文より引用

More than 50 long-term effects of COVID-19: a systematic review and meta-analysisの図2より引用

日本での追跡調査

入院患者さん525名のコロナ感染後の後遺症の経過を追跡調査した研究をご紹介します。

コロナ後遺症の症状を時系列でおった研究を引用します。

こちらの研究をみても、半年以上たっても何らかの後遺症が続いている方は少なくありません。

当然ではありますが、何らかの後遺症があると生活の支障が大きくなり、不安や抑うつ、睡眠障害を悪化させることが報告されています。

コロナ後遺症で相談の多い症状

コロナ後遺症で相談される症状をイラストにしました。

東京都福祉保健局のコロナ後遺症リーフレットから、コロナ後遺症での相談状況がまとまっています。

  • 女性が59%と少し多い
  • 40代以下が63%で全年代の多い
  • 半年以内に相談が多い
  • 65%が仕事に影響

となっています。そして症状として多いのが、

  • 嗅覚障害:32%
  • 倦怠感:27%
  • 味覚障害:25%
  • 発熱・微熱:18%
  • 呼吸困難感:15%
  • 咳:14%

このようになっています。

コロナウイルス感染に特に多いといわれている嗅覚・味覚異常は、長く続くと心配になってしまうことが多いのかと思います。

身体だけでなく心も

身体的な要因が低いとなると、精神的な要因が大きくなります。

精神状態をご自身で判断することは難しい場合も多く、どうぞ専門家にご相談ください。

コロナ感染症は、これまでのウイルス感染症にはないストレスがあったかと思います。

  • 重症化すると死に至るかもしれない不安
  • 感染したことでの周囲への影響
  • 半月以上の社会生活を離れざるを得ないストレス

など、緊急事態の中でのコロナ感染は、特殊なストレス下にあったかと思います。

先ほどの海外論文のうち、精神症状に関係するものの割合をみていくと以下のようになります。

  • 不安:13%(95%CI 3–26)
  • うつ:12%(95%CI 3–23)
  • 睡眠障害:11%(95%CI 3–24)
  • 精神病:6%(95%CI 6–6)
  • 気分障害:2%(95%CI 2–2)
  • 不快気分:2%(95%CI 1–3)
  • 強迫性障害:2%(95%CI 0–8)
  • PTSD:1%(95%CI 0–2)

この中には、コロナウイルスによる直接的な影響だけでなく、

  • もともとの精神疾患の悪化
  • ストレスが重なったことでの発症

も含まれるでしょう。

慢性疲労症候群(倦怠感)やブレインフォグ(注意障害)といった形でご相談を受けると、このような精神症状が認められることも多いです。

それぞれの状態によって対応も異なるため、専門家に相談いただくことが大切です。

コロナ後遺症の治療

コロナ後遺症については、その原因が様々ですので画一的な治療がありません

心身の両面から要因を検討して、治療を行っていく必要があります。

それぞれの症状に合わせて、まずは身体的な原因を検査することからはじめます。

身体的な異常がすべて否定されると、慢性疲労症候群や精神疾患を考えていくことになります。

ですから、まずは身体の症状からお伝えしていきます。

呼吸器や循環器系の症状

よくある症状として、息苦しさや咳、動悸や胸痛などがあります。

コロナ感染では肺炎の評価は必ず行っているかと思いますが、改善後も症状が続く場合は、改めて精査が必要となります。

中等度以上では半数以上で、CTでの異常が残ってしまうこともあり、なかなか評価が難しいところです。

肺炎だけでなく、虚血性心疾患など何らかの心臓にダメージをきたすという報告もあり、心疾患による心不全も鑑別していく必要があります。

呼吸状態の評価は呼吸器専門医に、心臓の状態は循環器専門医に相談することが望ましいです。

また重症度が高いほど、筋力低下や息苦しさが強く、肺機能低下が長引きやすいといわれています。

特に肺拡散能が低下しやすく、微細な器質的影響が残ってしまっている可能性もあります。

嗅覚や味覚症状

嗅覚障害は、気導性嗅覚障害(においが嗅神経まだ到達しない)、嗅神経性嗅覚障害(嗅神経がダメージ)、中枢性嗅覚障害(臭球よりも脳側のダメージ)に分けられます。

嗅覚がなくなる場合は、ほとんどが気導性嗅覚障害で、1か月以内に改善することがほとんどです。

一方で長く続く場合は嗅神経がダメージを受けている嗅神経性嗅覚障害で、多くの場合が異嗅症となります。

感染後嗅覚障害として、他の感染症でも認められており、漢方薬の当帰芍薬散や嗅覚刺激法などで対症的な治療が行われています。

味覚障害に関しては、様々な要因が複合的に関係しているといわれています。

味覚検査は正常だけれども味覚障害を訴える方も多く、風味障害が多いと考えられています。

口腔内乾燥や味細胞や神経の異常、亜鉛欠乏のほか、心理的な影響、嗅覚異常の影響などが考えられます。

いずれにしても耳鼻咽喉科で相談しながら、少しずつ改善するのを待つ形になります。

精神や神経系の症状

最も多い症状が、倦怠感と疲れやすさになります。

症状の発生する頻度は重症度関係ないという報告もあり、軽症であっても認められることがあります。

またブレインフォグと呼ばれる「頭がぼーっとする」ような症状、実行機能や集中力低下などが中枢神経系の症状として特徴的といわれています。

中枢・抹消神経系のダメージと心理的な影響、その両方が関係していると考えられています。

その理由として、

  • グリア細胞が長時間の免疫反応で障害
  • 血液脳関門(BBB)の機能低下と血管透過性亢進
  • 激しい炎症による凝固脳亢進に伴う微細な脳血管障害

などが考えられています。

また痛みやしびれなどが身体的にも心理的にも生じることもあります。

うつや不安といった症状も目立つ場合は、抗うつ剤が使われることもあり、フルボキサミンの抗炎症作用などが注目されています。

長期間の入院の場合は、廃用性の筋力低下など様々な要因が関係してきます。

メンタル面でのサポートを受けつつも、神経症状などが認められた場合は身体的な精査が必要になります。

コロナ後遺症に対するTMS治療

コロナ後遺症に対しては、

  • ブレインフォグ
  • 慢性疲労症候群

といった形で、rTMS療法が治療選択肢として検討されることがあります。

コロナ後遺症にTMS治療が効果的かどうかは、ほとんど知見がないのが実情です。

厚生労働省の発表したガイドラインの中でも、「有効な治療についてはエビデンスに乏しく…」といった形で、記載されていません。

TMS治療の効果が期待できるのは、「うつ症状に対して」になります。

残念ながら、慢性疲労や正常レベルでの集中力低下に対しては、TMS治療のエビデンスに乏しいのが現状です。

私たちも多くの治療を行ってきましたが、やはり治療効果は個人差があります。

このためTMS治療は、コロナ後遺症にうつ症状が認められている場合には治療選択肢ですが、うつ症状を伴わない場合は、症状を慎重に検討する必要があります。

もちろんコロナ感染後に倦怠感が残ってしまう場合は、ストレスも大きくうつ症状を呈している方も多いと思われます。

私たちもこれまでブレインフォグや慢性疲労症候群に対して、TMS治療を行っている方も少なくありません。

エビデンスに乏しいですが私たちの臨床実感を踏まえて、患者様にとってTMS治療が適切かどうかのご相談をさせていただくことができます。

現在、治療効果を検証するためにコロナ後遺症TMS治療探索プロジェクトを行い、治療と並行して検証をすすめています。

ブレインフォグとは?TMS治療の活用法

慢性疲労症候群とTMS治療

うつ病とTMS治療

当院での新型コロナウイルス後遺症治療

当法人では、新型コロナ後遺症のガイドラインを踏まえて、新しい情報を収集しながらコロナ後遺症治療を行っています。

当法人では、神奈川県に3つ、東京都に3つのクリニックがあります。

  • 上野御徒町こころみクリニック:「血液強みの総合内科」内科・血液内科・糖尿病内科
  • 田町三田こころみクリニック:「総合的な心の医療の充実」心療内科・精神科クリニック
  • 東京横浜TMSクリニックみなと東京院:「磁気刺激という新たな治療選択肢を」TMS治療専門クリニック
  • 元住吉こころみクリニック:「心と体をトータルでサポート」内科・心療内科の総合クリニック
  • 武蔵小杉こころみクリニック:「総合的な心の医療の充実」心療内科・精神科クリニック
  • 東京横浜TMSクリニックこすぎ神奈川院:「磁気刺激という新たな治療選択肢を」TMS治療専門クリニック

問診をしっかりと行う必要があり、心療内科でメインのご相談させていただいています。

心療内科では初診に30分あまりお話を伺い、再診でも5~10分の診療時間を確保できます。

永野医師が中心となり、コロナ後遺症外来を担当させていただきます。

  • 田町三田院:日曜
  • 元住吉院:月曜・火曜・木曜

身体疾患のチェックは、上野御徒町院と元住吉院でさせていただきます。

元住吉院には、呼吸器専門医・循環器専門医・血液専門医、上野御徒町院には、血液専門医・糖尿病内科専門医が在籍しております。

呼吸機能や心機能、血液などを精査することができ、身体疾患を探っていくことができます。

TMS治療が適切な方は、東京横浜TMSクリニック「みなと東京院」「こすぎ神奈川院」にて専門的なTMS治療を受けていただくことができます。

さらに詳細な検査が必要な場合は、総合病院などにご紹介させていただきます。

大澤 亮太

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:ブログ  投稿日:2021年10月22日