より高い治療効果が期待できるメソッド

両側とは、左側の興奮性の刺激を行う前に、右側を抑制性の刺激を加えることで治療効果を高めようとする方法になります。
これまではTMSで行うことが一般的でしたが、より短時間で行うことができるTBSでも治療効果が期待できることが報告されてきました。
TBSとはTheta Burst Stimulation(シーターバースト刺激法)の略で、通常のrTMSより特徴的な刺激パターンで治療期間をぐっと短縮し、同等の治療効果が確認されている刺激方法になります。
両側TBSでは、右側のcTBSを実施したあとに、左側のiTBSを実施していきます。
- cTBS:Continuous(持続的)
- iTBS:Intermittent(間欠的)
rTMSでは、右低頻度刺激の後に左高頻度刺激を行っていきますが、非常に時間がかかってしまいます。
両側TBS治療の特徴

一般にrTMSが10Hzの高頻度刺激を規則的に加えていく(ダ・ダ・ダ・ダ・)のに対し、TBSでは50Hzという超高頻度刺激を不規則に(ダダダ・・ダダダ・・ダダダ・・)5Hz間隔で2秒与えていきます。
各刺激のインターバル(休憩)をとるかとらないかが、iTBSとcTBSの違いになります。
iTBSが2秒間の刺激時間の合間に8秒間のインターバルを置くのに対し、cTBSではインターバルを置くことなく、2秒×20回分を連続して刺激を与え続けます。
このため1セッションは40秒と非常に短く、総刺激数はiTBS同様に600発になります。
cTBSは抑制目的の治療プロトコールですが、短時間で行えることがメリットになります。
他の治療法との違い

脳は半球間抑制という形で、左と右がバランスをとっています。
このためpriming刺激という方法で、例えば左側を興奮させたいときに前もって右側を抑制しておくと治療効果が高まるのではと考えられていました。
- 右抑制:右低頻度rTMS・右cTBS
- 左興奮:左高頻度rTMS・左iTBS
このようにして実施してくのが、両側TMS・両側TBSになります。
両側TMSと両側TBSは効果が高い?

成人の大うつ病エピソードの急性期治療における手術を伴わない脳刺激の有効性と受容性の比較:システマティックレビューとネットワークメタアナリシス
両側(bilateral)TMSの治療効果が高いことは以前より報告されてきましたが、治療時間が長くなってしまうのが難点でした。
そのため治療時間を短縮できる両側TBS治療についても少しずつ研究がされ、うつ病の高齢者に対して両側TBS治療が両側TMS治療に対して非劣性(同等)であることが示されました。
【うつ病高齢者における標準的な両側rTMSと両側TBSの有効性比較:FOUR-D ランダム化非劣性臨床試験】
そして慶應大学でも長年かけて行われた研究結果がまとまり、同等とまではいかなくても一定の効果があることが確認されています。(HAM-Dで非劣性だがMADRSでは示せず)
【治療抵抗性うつ病患者に対する両側rTMSと両側TBSの有効性比較(BEAT-D):ランダム化非劣性臨床試験】
これまでの結果をうけて、東京横浜TMSクリニックでも両側TBSを行う臨床的意義は十分になったと判断し、治療プロトコールとして開始を予定しています。