コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~
臨床研究の概要
医療法人社団こころみ東京横浜TMSクリニックは、「コロナ後遺症に伴う不安抑うつ・認知機能障害に対する新規経頭蓋刺激療法(rTMS)による治療法開発に向けた多施設共同試験」を実施いたします。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患後、大部分の方は時間経過とともに症状は改善します。しかし一部の方で、長引く症状(いわゆる後遺症)があることが報告されています。
呼吸器症状をはじめとした急性期症状が軽快・改善し、3ヶ月以上が経った後でも、慢性的な精神的不調や認知機能の低下、慢性的な疲労感を訴える患者さんが、約1割程度いることが報告されています。
そのような病態を「コロナ後遺症」と呼びます。
しかしながら、コロナ後遺症に対する科学的根拠のある治療法はまだ確立されていません。
コロナ後遺症では、認知機能障害や慢性疲労が持続することにより、止む無く仕事を休職あるいは離職せざるを得ないケースも増えてきています。
また、COVID-19感染後、2年以上経過した後でもコロナ後遺症としての認知機能障害や慢性疲労が残存し、日常生活や就労に深刻な影響を及ぼしているケースも見られています。
このようにコロナ後遺症は医学的にも社会的にも重大な問題となっています。
そのような背景の下、本研究に先立ち、コロナ後遺症による精神症状や認知機能障害で困っている患者さん(DSM-5上はうつ病に相当)に対して、通常診療の枠組みで経頭蓋磁気刺激療法を提供しました。
そこから得られた知見をTMSレジストリ研究としてまとめ、コロナ後遺症の症状の中でも特にうつ症状や認知機能障害が改善する可能性が見出されました。
そこで今回、私たちは、コロナ後遺症に伴う精神症状や認知機能低下に対する有効な治療法を確立することを目的に、新規経頭蓋磁気刺激法プロトコルによるニューロモデュレーションの有効性と安全性を検証するための無作為化プラセボ対照試験を計画しました。
臨床研究について
本研究についてご説明いたします。よくお読みいただき、該当される場合はエントリーフォームにご入力お願いします。
対象
以下の基準をもとに、事前に電話確認でスクリーニングさせていただきます。
組み入れ基準
- COVID-19に感染し、PCR検査等にて陽性の判定を受け、その後に陰性化した患者さん
- COVID-19感染後に初めてDSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)にてうつ病あるいは不安障害の診断基準を満たす患者さん
- 同意取得時の年齢が18歳以上70歳以下の患者さん
- スクリーニング期におけるMADRS(うつ病評価尺度)にて15点以上の重症度を示す患者さん
- 担当医から文書で同意することが可能であると判断された患者さん
- TMS療法期間中に研究実施機関の外来に定期的に通院することが可能な患者さん
除外基準
- 脳器質性疾患(中等症以上の頭蓋内器質性病変や神経変性疾患等)を有している患者さん
- 原発性睡眠障害(睡眠時無呼吸やナルコレプシーなど)がある患者さん
- 双極性障害、統合失調症、精神病性うつ病、薬物乱用・依存症の診断を受けている患者さん
- 自己免疫疾患や内分泌代謝疾患(下垂体機能低下症、副腎不全、甲状腺疾患、糖尿病など)の診断を受けている患者さん
- けいれん発作やてんかんの既往がある患者さん
- 外来TMS療法を受けることが困難な重篤または不安定な身体疾患を有する患者さん
- 過去6か月以内にECTを受けている患者さん
- 妊娠中あるいは妊娠の予定がある患者さん
- その他研究責任医師又は研究分担医師が不適当と判断した患者さん
実施方法
この臨床研究では、コロナ後遺症に伴う精神症状で困っていらっしゃる患者さん70名に参加していただき、経頭蓋磁気刺激による症状改善効果と安全性を本物の磁気刺激(アクティブ刺激)と偽物の磁気刺激(プラセボシャム刺激)との間で比較検証することで評価します。
プラセボシャム刺激は、アクティブ刺激の刺激パターンを変更し、弱めたもので、その他の仕様や外観はアクティブ刺激と同じです。
経頭蓋磁気刺激において、プラセボシャム刺激を使用するのは、アクティブ刺激による臨床効果をより客観的に評価するためです。
この臨床研究への参加が可能であると判断された患者さんは、AとBの二つのグループに分かれていただきます。
グループ分けはコンピュータでランダムに行われ、グループAとなる割合とグループBとなる割合とは同じです。
ただし、患者さんがどちらのグループに入っているかは、患者さんにも担当医師にも分からないようになっています。
このような方法は、二重盲検法といい、先入観を入れずに臨床研究の結果を客観的に評価するための一般的な方法です。
アクティブ刺激あるいはプラセボシャムプラセボ刺激による経頭蓋磁気刺激介入は、原則、隔日で週3日(2セッション/日)を計4週間継続して行い、合計24セッションの介入を行う予定です。
研究のスケジュール
この臨床研究のスケジュールは、次のとおりです。
臨床研究にかかる費用
この臨床研究において実施する各種検査に係る費用は、この臨床研究の研究費によって全額賄われるため、患者さんの費用負担は発生しません。
この臨床研究に参加された場合には、計画書に定められた時期に所定の検査を受けるために来院していただくことになります。
その際の患者さんの交通費等の負担を軽減するために、
- 経頭蓋磁気刺激介入前の検査一式の完了で5,000円
- 最低15回以上の経頭蓋磁気刺激を受けた場合に限り5,000円
- 経頭蓋磁気刺激介入後の検査一式の完了で5,000円
(よって、最大で計15,000円)を負担軽減費として各患者さんに臨床研究終了後にお支払いいたします。
臨床試験届出情報
研究名称
コロナ後遺症に伴う不安抑うつ・認知機能障害に対する新規経頭蓋磁気刺激法による非侵襲的ニューロモデュレーション治療開発に向けた多施設共同ランダム化プラセボ対照比較試験
平易な研究名称
コロナ後遺症に対するTMS療法開発に向けたRCT
研究責任医師の名称
医療法人社団こころみ 東京横浜TMSクリニック みなと東京院 大澤亮太
対象疾患名
コロナ後遺症に伴う精神症状(不安抑うつ・認知機能障害)
研究・治験の目的
コロナ後遺症関連精神症状(不安抑うつ・認知機能障害)に対する新規経頭蓋磁気刺激療法のプロトコル開発に向けて、アクティブ刺激条件とシャム刺激条件に無作為に割り付けて、同プロトコルの有用性(有効性と忍容性・安全性)について検討する。
お問合せ先
臨床研究に関するお問い合わせ
※担当者より折り返しご連絡させていただきます。
報道に関するお問い合わせ
【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。
また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。
取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2023年8月21日
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