当院のうつ病TMS治療成績(2022年1月~2022年12月末)
治療成績
- 病名:うつ病
- 期間:2022年1月~2022年12月31日
- 症例数:117名(30回実施214名)
寛解率56% 反応率79%程度
2022年1月から、2022年12月末までに30回以上実施したうつ病・うつ状態の全症例(214例)のうち、心理検査を前後で実施できている患者様の治療成績をご紹介します。
結果としては、
- 寛解率:56%(症状を特に感じずに生活できる状態)
- 反応率:79%(病的とまでいかない症状が残っている状態)
となりました。
寛解はHAM-D7点以下かつMADRS10点以下、反応率は50%以上の改善が認められることを条件としています。
治療成績の考察
うつ病でのTMS治療成績になりますが、かなり良い治療成績となったかと考えられます。
治療成績の参考になるものとして、アメリカでの多施設観察研究があります。
42施設(76%が民間クリニック)257人で1年の経過観察をしていて、およそ寛解率は40~45%、反応率62~67%になります。
こちらをみると、当院では寛解率が56%と、比較しても高い治療成績となりました。
この結果は治験などとは異なり、プラセボ効果や心理療法的な側面も含めての結果ですので、研究などで示されている治療成績よりも高くなります。
それを考慮しても高い治療成績が認められた要因としては、大きく3つあると考えています。
- 標準治療が2倍量iTBS
- スタッフのかかわり
- 評価者が医者
通常は600発のiTBSとなりますが、当院では治療効果を高めるために倍量の1200発のiTBSとなっています。
またゆとりある人員配置となっていることもあり、スタッフと患者様の距離も近い印象があります。
こういった治療としての特徴もありますが、評価者が医者であることは、実態よりも治療成績を良くしてしまっている可能性もあります。
患者様はみなさん、医師には良い面を伝えていただくことが多いですし、評価する医師も良くなってほしいという希望が結果に影響している可能性があるのです。
正確な統計をとることと、診察がおしてしまって心理検査ができなくなってしまうことがあり、欠落データを防ぐ目的でも、現在心理スタッフが検査実施できる体制を整えています。
治療成績を可視化して治療向上へ
東京横浜TMSクリニックでは、治療の前後で精度の高い心理検査を実施することで、治療成績を数字にして評価しています。
当院では、うつ症状に対するTMS治療実施にあたっては、HAM-DやMADRSといった薬の治験などでも実施する心理検査を行います。
こちらは専門家が評価する心理検査になり、自記式のSDSなどとよりも精度が高く、適切な治療判断につながります。
当院ではこのように治療成績を可視化することで、さらなる治療向上を目指しています。
またスタッフが症例サマリーを作成することで、多職種で治療の検証を行っています。
安心してTMS治療を受けていただくために、客観的なデータを発信していきたいと考えています。
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2023年5月25日
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