「多くの人が問題なくこなしていることを、自分はできない」「周りはまったく気にしていないのに、自分だけが気になってしまう」といった状況は、いわば少数派であり、「自分の気持ちは誰にもわかってもらえない」と苦しむこともあるはずです。
病気としてのHSPとTMS治療
HSPは「環境感受性が高い」ことを意味していますが、人間の社会においては対人関係において困難さを感じることが多いです。
このように「対人関係での不安」というシンプルなものであれば、社交不安障害という不安障害か、うつ病などの気分の影響を考えていきます。
また心的外傷後ストレス障害(PTSD)のように、万人が処理できないようなトラウマ体験によって、過覚醒症状として感覚過敏が認められることもあります。
自閉症スペクトラム障害でも、感覚過敏が症状の一つとして認められることがあります。
「対人過敏性の高さ」ということであれば、ADHDの感情調節障害や非定型うつ病での拒絶過敏性、見捨てられ不安などの境界性パーソナリティの心性などを考えていきます。
これらの場合は、それぞれの病気に応じた治療を行っていく必要があります。
TMS治療は有効?
それではTMS治療は、HSPに効果が期待できるのでしょうか?
TMS治療での効果が期待できるのは、あくまでうつや不安といった状態の改善になります。
TMS治療によって状態を安定させることに意味はありますが、本質的に行う価値があるかは個人差も大きく、専門家に相談いただいたほうが良いかと思います。
専門家が診察し抗うつ剤を使ったほうが良い状態であれば、TMS治療も検討できるかもしれません。
しかしながら本来のHSPとしての特性は、心理療法によって時間をかけて向き合っていくべき課題になります。
お薬やTMS治療はそのためのサポートとなることが多く、心理療法も特別な方法があるわけではありません。
HSPは上述させていただいた通り、それを入り口としてTMS治療であったり、我流のカウンセリングに誘導するケースもあります。
カウンセリングについても、臨床心理士、少なくとも国家資格である公認心理師をもっているカウンセラーにご相談いただいたほうが良いかと思います。
まずはHSP専門といったところではなく、一般的な精神科医の診察を受けて自身の状態と特性を理解したうえで、HSPが生きづらさとなっているならばスタンダートな治療を検討ください。
HSPについてのまとめ
今回は、HSPについて詳しくご説明しました。
HSPとは環境感受性が高いことを表し、周囲の環境からさまざまな影響を受けやすい人です。
遺伝的に受け継ぐ感受性遺伝子に加えて、幼少期の環境によって環境感受性は形成されます。
環境感受性を「高い」「低い」と定める基準は設けられておらず、インターネット上のHSP診断にもエビデンスはありません。
信頼性の低い診断でHSPであるかを自己判断するのは、あまりおすすめできません。
また、HSS型や内向型・外向型といったように、占いのようにタイプに分けていたりすることもありますが、分類する意義も少ないかと思われます。
自分を取り巻く環境から影響を受けやすいことで、ストレスや感情の変化が激しく、結果的にうつ症状が出ている可能性はあります。
日常生活が困難になるほどの心身の変化を感じている場合は、病気としての治療を考えて、まずはお近くの心療内科や精神科を受診することが大切です。
TMS治療は、状態によっては治療選択肢の一つになることがあります。
TMS治療をご検討の方へ

当院では、HSPでお困りの方から相談いただくこともあります。
HSPはお伝えしてきたように、病気の概念としてはっきりしておらず、様々な状態が考えられます。
HSPと思われている本質は何かを判断することは、心の診療の経験が大切になります。
TMS治療は、うつ症状を伴っている場合は治療選択肢のひとつとなります。
専門家の手助けが必要だと感じている方は、ご相談ください。