ADHDの注意力に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)のポジティブな効果:パイロットランダム化比較試験
こちらの論文は、
のページに引用しています。
右DLPFC高頻度刺激で不注意が改善するかもしれない
こちらの研究は、13人のADHD患者さんに対して右DLPFC高頻度刺激を行った報告となり、今後の研究の方向性をさぐるパイロット研究になります。
結果としては、不注意スコアが少し改善したという報告となっており、右背外側前頭前野の高頻度刺激が、ADHD特性としての不注意症状を改善してくれるかもしれないという結論となっています。
こちらの研究が発表されたのが2009年、その後には2012年にネガティブな報告がなされ、ADHDに対するポジティブな研究報告はほとんどされていません。
ADHD特性の治療としては、現在のプロトコールでのDLPFCをターゲットとした治療では効果が期待しづらいことを意味しています。
ADHDの方に対するTMS治療は、うつ症状を伴う場合に状態を安定させて、その結果としてのADHD特性も落ち着くことを目指していく形になります。
ADHDに対するポジティブな報告は少ないので、こちらの論文などをとりあげて、効果をうたっている医療機関もあります。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
目的
反復経頭蓋刺激(rTMS)は、前頭前野のドパミン分泌に影響を与える。
注意欠陥多動性障害(ADHD)には、ドパミン作動性前頭前野の異常が関与していることが示唆されていた。
方法
大人のADHDと診断された患者に、右前頭前野に対して高頻度rTMSを1回(実刺激)、または偽刺激を1回与え、クロスオーバー二重盲検ランダム化対照パイロット試験を実施した。
結果
DSM-IV基準による成人ADHDの基準を満たす13名の患者(男性7名、女性6名)がインフォームドコンセントを得て登録された。
実刺激の10分後に注意力に対する特異的な有益性が認められた。
実刺激後の注意スコアは、実刺激前の注意スコア(M=3.31、標準偏差=0.5)と比較して、有意に改善した(M=3.56、標準偏差=0.39)[t(12)=2.235、P<0.05]。
TMSは、気分と不安の測定には影響を及ぼさなかった。偽刺激は全く効果を示さなかった。
限界
刺激パラメータ、患者の年齢および結果指標の不均一性により、知見の解釈が制限された。
結論
今回の結果は、右背外側前頭前野に対する高頻度rTMSによるADHD患者の注意欠陥の改善の可能性について、今後の研究を促すものである。
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年4月3日
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