薬物中毒、摂食障害、肥満者での渇望および消費に対するシングルセッションvsマルチセッションの非侵襲的脳刺激の効果:メタアナリシス
こちらの論文は、
のページに引用しています。
DLPFC高頻度刺激はマルチセッションの方がよい
こちらの論文は、薬物中毒や摂食障害、肥満者といった依存傾向がある方に対して、渇望と消費の2つの点でTMS治療の効果を調べたメタアナリシスになります。
非侵襲的脳刺激法として、rTMSだけでなくtDCSもあわせて解析しています。
結果として、手法による効果のあらわれ方に大きな違いは認められませんでした。
渇望に関する効果は小さいものの、消費減少に対しては中程度の効果が認められるという結果となりました。
情動の安定が、こういった依存性物質の消費抑制にも寄与しているかもしれません。
またこちらの研究では、シングルセッションとマルチセッションでの比較も行っています。
結果としてマルチセッションの方が効果的で、セッション数が多く刺激パルス数が多いほど、渇望が減少するという相関が認められています。
どのくらいが最適かはわかりませんが、依存症治療においては複数回しっかりとTMS治療を行う方が効果が期待できると思われます。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
背景
脳刺激による介入は、薬物依存や過剰な摂食行動のある人々の渇望と消費を減らすためにますます使用されている。
しかし、これらの新しい治療法の有効性や、効果の大きさが介入期間の長さに影響されるかどうかについては、包括的な評価がなされていない。
目的
背外側前頭前野(DLPFC)を標的とした、非侵襲的な興奮性脳刺激[経頭蓋直流刺激(tDCS)および高周波反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が、薬物および摂食障害における渇望および消費レベルを減少させる効果を、単回および複数回のプロトコルを含めて評価するために、メタアナリシス的なアプローチを採用した。
方法
包括的な文献検索の後、48の査読付き研究(合計1095人の被験者)を今回のメタ分析に含めた。
効果の大きさを評価するための保守的な指標としてHedge’s gを計算した。
結果
ランダム効果解析の結果、神経調節介入の渇望に対する効果は小さく、消費に対する効果は中程度であり、実刺激が偽刺激よりも有効であった。
これらの効果は、調査した異なる集団(アルコール、ニコチン、違法薬物、摂食障害)や使用した手法(rTMS/tDCS、左半球/右半球)によって異なることはなかった。
複数回セッションのプロトコルは、単回セッションのプロトコルよりも渇望および消費の減少に対する大きな効果サイズを示し、セッション数または刺激パルス数と渇望の減少との間に正の線形関係が認められ、用量反応効果を示した。
結論
今回の結果は、DLPFCを標的とした新規の非侵襲的脳刺激が渇望と消費レベルを減少させ(薬物依存における後者の効果に関する最初のメタ分析的証拠を提供する)、単回セッションの介入と比較して複数回セッションでより大きな効果を示すという説得力のある証拠を提供する。
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年4月8日
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