電気けいれん療法(ECT)のアウトカムに対する併用薬物療法の効果:短期間での有効性と副作用

こちらの論文は、

のページに引用しています。

抗うつ剤とECTの併用は有効

こちらの論文は、ECT治療において抗うつ剤との併用がどのような影響を与えるかについて調べたRCTになります。

ノリトリプチリン(商品名:ノリトレン)とベンラファキシン(商品名:イフェクサー)をECT治療に併用した場合に、どのような影響があるかを調べています。

三環系抗うつ薬のノリトリプチリンでは、ECTと併用することで効果の増強が認められ、認知機能に対しても良い影響があったとされています。

ノリトリプチリンはノルアドレナリン作用を強める働きがあり、それが効果の増強と認知機能へのポジティブンな働きに影響していると考えられます。

ベンラファキシンは治療効果を高めるものの、認知機能には中程度の悪影響がでていました。

このように抗うつ剤とECTの併用はプラスに働くといえそうですが、薬によって認知機能への影響が変化する可能性があります。

論文のご紹介

ECTでの併用薬による違いでの治療効果の違いを調べた論文をご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

薬物抵抗性は大うつ病における電気けいれん療法(ECT)の主要な適応である。

ECTに先立って抗うつ薬を中止するという方法は、1960年代から1970年代に行われた非抵抗性の患者を対象とした研究から生まれた。

また、右片側と両側のECTの相対的な有効性と副作用については、論争が続いている。

目的

プラセボと比較して、ECTコース中にノルトリプチリンまたはベンラファキシンを併用することで、副作用に意味のある影響を与えることなく短期的な有効性を高め、ECT後の再発率を低下させるという仮説を検証する。

また、高用量の右側片側ECTは、中用量の両側ECTと同等の有効性を示し、認知的な副作用に関しても優位性を保つという仮説を検証する。

試験デザイン

2001年から2005年にかけて実施された前向き、ランダム化、三重盲検化、プラセボ対照試験。

施設

大学病院3施設。

患者

ECTに紹介された連続した約750人の患者のうち、大うつ病エピソードを持つ319人が同意し、薬物治療群またはECT治療群に無作為に割り付けられ、少なくとも1回のECT治療を受けた。

主要評価項目

ハミルトンうつ病評価尺度(HRSD)のスコア、ECT終了後の寛解率、認知的副作用の選択的測定。

結果

ノルトリプチリンは、プラセボと比較してECTの有効性を高め、認知機能の副作用を軽減した。

ベンラファキシンは改善の程度が弱く、認知機能の副作用を悪化させる傾向があった。

高用量の右片側ECTは両片側ECTと有効性に差はない、あるいは両片側ECTよりも優れており、重度の健忘症は少なかった。

結論

ECTの有効性は抗うつ薬の併用によって大幅に増加するが、そのような薬は認知的な副作用を軽減するか増加するかで異なる可能性がある。

高用量の右側片側ECTは、中用量の両側ECTと少なくとも同等の有効性を示すが、認知機能への悪影響に関しては優位性を保っている。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年9月23日

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