当法人が応援している市川誠一郎選手よりメッセージ

はじめまして!

東京横浜TMSクリニックを運営されている「こころみクリニック」にサポートいただいているプロテニス選手の市川誠一郎です。

今回はアスリートとストレス、心の健康について書かせていただきます。

勝ち負けから幸せに向かう

結果で全てが決まる世界

スポーツの世界は、毎日真面目に一生懸命働いていることや、周りとのコネクションなども最終的には関係なく、プロセスに評価がなされず結果で全てが決まってしまう世界です。

勿論、実際に結果にコミットするためには目先の数字よりプロセスが遥かに重要になることも多いですが、スポーツではビジネスのように何をやったら勝てるか、実際に結果に繋がるかの計算が非常に立ちづらいです。

結果が全てにも関わらず、結果が出る可能性が高い手法を確立することが殆ど不可能で、手探りで進めなければならない性質が強いです。

アスリートに押し寄せる周囲からの巨大なストレス

こうした性質を持っているため、プロセスを踏んでいる段階では、全く先行きの見通しが立たない上に、現状結果が出ていない事による精神的負荷がとても大きいです。

特に個人競技では、それらを和らげる要素が殆ど介在していないため、選手はこのストレスにモロにさらされます。

結果が全てという価値観、成功失敗の極端な二極論がスポーツでは強すぎるために、結果論が蔓延ってしまい、
周囲は勿論、コーチも、数字上は失敗に見える実質的成長に理解を示してくれることが非常に少ないのが現状です。

こうした環境に囲まれていると、選手の価値観も同様の方向に向かっていきます。

並外れて競争的性質(負けず嫌い)を持った選手、トップを走り続けられるほどの圧倒的な資質を持った選手以外の大半が、精神的な負荷に揺れされて不安定な状態で過ごしているのが現状です。

こうしたストレスに対して、周囲に流されない自分自身の確固たる価値観を形成できるようになるか、上手い具合に息抜きとのバランスを取ってストレスと付き合うことができないと、精神的な部分から耐えられなくなってキャリアを終える選手は少なくありません。

多くの選手達と時間を過ごして来ましたが、才能あるジュニア選手が親からのプレッシャーで競技をやめてしまうことを何度も目の当たりにしてきました。

プロ選手になれば、毎週のように試合があり、毎週負けるたびに大きく精神的にアップダウンし、周りの選手と自分を比べたり、そうした負の循環に陥って辞めていく選手が殆どです。

ヨーロッパに行って解放された周囲からのストレス

僕自身も、競技や自身の競技レベルを極めていく事には喜びがあるものの、負けず嫌いではなく、相手に打ち勝つ、倒す、勝ち上がること自体にはモチベーションや喜びを見出せず、かと言ってそんなことを周囲には話せず、選手に向いてないのではないかと長い間悩みました。

何かあれば、お前は勝ちたいのか?(勝ちたくないと答えるなら選手はやめろ)と無理矢理コーチに迫られるような世界です。

そこで、いいえ、そうではなく…などとは言えません。

僕はヨーロッパを拠点に選手活動していますが、日本にいた頃はコーチに言われた言葉で眠れないことが毎日のようになったり、毎日のように辞めたいどころか、自分は無能だ、もう死にたい、と練習前、練習後に思っていたのは一生忘れられません。

僕自身は、そうした価値観の合わない指導者を離れ、現在ヨーロッパを拠点に活動することで、自分自身の価値観に疑いを持たず、確固たる自分の価値観を確立することができました。

それ以来一気に競技力も向上していくと同時に、これまで抱えていたストレスは一気に無くなり、晴れやかに生きられるようになりました。

逆に言えば、そうしたストレスがなくなったからこそ恐怖なく自分の意思で競技に取り組むようになり競技力も伸びました(競技力自身の変化はおまけで、重要なのはメンタル面の変化だと捉えられる価値観が重要です)。

ストレス循環からの脱却〜幸せに向かう

勿論、それぞれの選手の特性によって、適した向き合い方は異なるのですが、一般的には、周囲や結果ではなく数字に表れないプロセス、道のり自体に価値、喜びの軸を移すことが非常に重要だと考えています。

僕自身はプロ選手でありながら、まだ一流プロ選手に比べれば戦績も遥かに及ばないし、節約に節約を重ねてギリギリ選手生活を回しています。

僕自身は確かに世界一自在に身体を操り、どんな状況でも自在にボールを打ち、素晴らしい選手達と最高のゲームをして、その瞬間の感覚を体験したいと考えていますが、世間が言う成功には一切興味はありません。

その試合をしている瞬間の集中が高まった瞬間や、それまでの道中の毎日の練習、毎週の試合、見ていく景色、出会う人達に一番の価値を見出しています。

つまり、僕自身は今毎日最高にできることをやり切り、最高に幸せなので、別に最終的に世界一位になろうが億万長者になろうが、このままなんの戦績もなく終わろうが、そんなことはあまり関係なく、世間が成功という言葉にこだわるなら、既に大成功していると感じています。

勝敗だけで全てが決まるというのは、ある意味純粋で、見る側にはエキサイティングな世界ですが、それはルールの中で競争、争い、戦争を作り出している状態であり、現実世界で争い、戦いを無くし、勝ち負けではなく共存、平和をもたらすことを目指すのとは対極にあります。

ある意味、日常では良しとされないことが良しとされる世界で、本来人に与えるべきではない強い精神的負荷を伴うものです。

一般の方であれば、そこまで極端なことではないものの、アマチュアであってすら、競技の話になると、あの人は上手い、この人は下手、というレッテルを最初に貼っていく傾向が強いです。

僕たちがスポーツをする最大の目的は、それで楽しい時間を過ごすことや健康であることであって、何も仕事ではないのでそこまで根つめて頑張ったり、勝つ必要もありません。

もしかしたらこれはスポーツに限ったことではないかもしれません。

勝敗、優劣、上下、成功失敗、正しさ間違い、お金、そうした物差しを捨てて、足りるを知り、与えるを知り、求めすぎず、幸せに楽しく遊ぶ、生きることが、ストレスから解放される大きなシフトチェンジではないか、と感じます。

アスリートとTMS治療

僕自身は日本を離れることでストレス循環から脱却できましたが、海外に移住するような解決方法は多くの場合は難しく、一度ストレス循環に入ってしまうと、その時は視野が非常に狭くなっており、一人でそこから脱却するのは非常に大変です。

そうした際には躊躇わず、専門家、医師に相談を受けることが重要です。

僕自身も、何度もカンセリングに行こうと思いましたが、経済的な余裕がなく断念しましたが、そのために何年もの時間を費やしてしまいました。

僕はアスリートで比較的自分の意思が強い方だと思いますが、繊細な方であれば鬱になってもおかしくなかったと思います。

こころの健康、幸せが人生で一番重要なことで、十分にお金をかける価値があります。

心の悩みはふわっとしたものと受け止められがちですが、現在はTMS治療のような科学的な物理治療も確立され、短期間で根本的な変化が表れます。

サポートいただいている大澤先生には、僕自身も当時色々な話を聞かせてもらい、助けられてきました。

気軽にクリニックを訪れてみてください。

プロテニスプレイヤーの市川誠一郎のプロフィール写真です。

執筆者紹介

市川誠一郎

プロテニスプレイヤー

東大卒業後の25歳よりテニスを始め、現在はアメリカやヨーロッパの国際大会を転戦。国内トッププロと共に、プロメンタルカード硬式テニスを監修。

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2023年2月11日

関連記事

脳卒中による運動麻痺とTMS治療

脳卒中の後遺症である運動麻痺にTMS治療は、「効果がある可能性がある」と考えられています。 脳卒中の運動麻痺といっても様々ですが、とくに上肢麻痺(手)に対してエビデンスレベルAとなっています。 その他にも下肢麻痺など運動… 続きを読む 脳卒中による運動麻痺とTMS治療

投稿日:

脳卒中とTMS治療

脳卒中の後遺症にTMS治療は、「効果がある可能性がある」と考えられています。 その後遺症の内容によって異なりますが、上肢(手)麻痺に対してエビデンスレベルAとなっています。 その他にも失語症や下肢麻痺などにも治療が試みら… 続きを読む 脳卒中とTMS治療

投稿日:

愛知・名古屋のTMS治療クリニック・病院を紹介

うつ病といえばお薬による治療や心理療法などがイメージされるかと思いますが、最近では磁気によるrTMS療法が少しずつ広がっています。

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

「燃え尽き症候群(バーンアウト)」とは?なりやすい人や治療法を解説

「燃え尽き症候群(もえつきしょうこうぐん)」とは、その名の通り、それまでの意欲や熱意がまるで燃え尽きたように消失してしまう状態のことです。 もともとは意欲があった人が、突然やる気を失う。いきなりの変化に「あんなに熱意があ… 続きを読む 「燃え尽き症候群(バーンアウト)」とは?なりやすい人や治療法を解説

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日:

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE