悪性腫瘍に続発する神経障害性疼痛におけるrTMS:ランダム化臨床試験

こちらの論文は、

のページに引用しています。

M1に対する高頻度刺激は短期的な効果

こちらの研究は、10回の高頻度刺激をM1領域に行ったことで、悪性腫瘍による神経障害性疼痛の軽減に効果があるかを調べたランダム化試験になります。

34名の患者さんをランダムに割り振って、10日連続で高頻度刺激と偽刺激を行って比較しています。

その結果として、治療直後は明らかに鎮痛効果が認められましたが、1か月後にはその差がなくなってしまったという結果となっています。

刺激期間や方法を工夫すれば持続するようになる可能性がありますが、現在のところは短期的な効果のみが示されています。

TMS治療は、慢性疼痛に対する治療効果がM1領域を主なターゲットとして研究されています。

短期的な効果であったとしても、悪性腫瘍の疼痛緩和として効果が期待できる可能性があることは有意義なことです。

論文のご紹介

腫瘍による慢性疼痛とTMS治療のランダム化試験を紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の有意な鎮痛効果は、様々な原因による慢性疼痛患者を対象としたいくつかの研究で認められているが、悪性腫瘍を対象としたものはない。

本研究の目的は、悪性腫瘍に続発する神経障害性疼痛を有する患者において、一次運動野(M1)に対する10回のrTMSの有効性を評価することであった。

方法

34名の患者をランダムに2つのグループのいずれかに割り振り、実刺激(20Hz、10秒、80%の強度で10回のトレーニング)または偽刺激のrTMSを10日間連続して毎日受けさせた。

患者は、治療前、1回目、5回目、10回目の治療セッション後、そして治療後15日目と1カ月目に、言語記述尺度(VDS)、視覚的アナログ尺度(VAS)、神経因性症状・徴候のリーズ評価(LANSS)、うつ病のハミルトン評価尺度(HAM-D)を用いて評価した。

結果

治療前における罹患期間や痛みの評価スコアについては、実刺激群と偽刺激群との間に有意な差はなかった。

有意な「時間×グループ」の交互作用が記録され、VDS、VAS、LANSSおよびHAM-Dの各尺度に対して、実刺激群と偽刺激群の間に差が見られた。

事後検定の結果、実刺激で治療を受けた患者群では、すべての尺度でより大きな改善が見られ、その効果は15日まで持続したが、1か月後には見られなかった。

10回目のセッション後と15日後における痛みの軽減率とHAM-Dの間には、有意な正の相関が記録された。

結論

この結果は、M1に対する10回のrTMSセッションが、悪性腫瘍に続発する神経障害性疼痛を短期的に鎮痛出来る可能性を示している。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年5月1日

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