TMS治療にあたってのお薬調整

TMS治療の効果を高める薬物調整をお伝えします。

当院では、他院で薬物治療を受けられている患者様のご相談をうけることが多いです。

TMS治療を安全に、そしてより効果的に行っていくためには、お薬の調整が必要となる場合がございます。

ここでは主治医の先生にご理解いただきながら、適切なTMS治療を行っていくために、お願いいただきたいことをまとめさせていただきます。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬をなるべく減量

ベンゾジアゼピン系のお薬は、脳の神経細胞の働きを抑えることで、不安や不眠に効果を期待していくお薬になります。

このためTMS治療を行うにあたっては、以下の2つのデメリットがあります。

  • 治療効果が弱くなってしまう
  • 強めの刺激が必要となって痛みが増す

TMS治療は磁気を利用したピンポイントの電気刺激になりますから、脳の神経細胞の働きが抑えられてしまうと、刺激に反応しにくくなってしまいます。

アルコールや治療中の居眠りなども同様になりますが、TMS治療の刺激が弱まってしまって、効果が弱まってしまいます。

そのため刺激強度を高める必要が出てきますので、刺激強度を決定する際のrMT(運動野が50%の反応を示す刺激強度)が高くなってしまいます。

刺激強度が強くなってしまうので、頭皮痛が増してしまいます。

ですから、なるべくベンゾジアゼピン系のお薬は減量いただくことが望ましく、TMS治療の前だけでも少なめにしていただくと、治療効果が高まります。

頓服を使われている方は、治療前は控えていただく方がよいです。

ベンゾジアゼピン系のお薬は、急な減薬には離脱症状が生じてしまうことがありますので、できる範囲で減量をお願いします。

【大うつ病性障害のrTMS治療における併用薬と臨床アウトカム】

三環系抗うつ薬は減量・中止

三環系抗うつ薬には、けいれんを誘発しやすく(けいれん閾値を下げる)してしまうことが分かっています。

ですから安全性の観点で、できるだけ減量いただき、なるべくならば中止いただくことが望ましいです。

SSRIやSNRI、NaSSAといったいわゆる新規抗うつ薬は問題なく、むしろ治療効果を高めてくれることが報告されています。

なるべく新しい抗うつ剤に変更いただくことが望ましく、高用量の三環系抗うつ薬を服用されている場合は、TMS治療が行えない場合もございます。

  • トリプタノール(一般名:アミトリプチリン)
  • トフラニール(一般名:イミプラミン)
  • アナフラニール(一般名:クロミプラミン)
  • アモキサン(一般名:アモキサピン)
  • ノリトレン(一般名:ノルトリプチリン)

このようなお薬が三環系抗うつ薬に分類されます。

【治療抵抗性うつ病に対する片側および両側rTMS:20年にわたるランダム化比較試験のメタアナリシス】

そのほかのお薬は継続可

TMS治療を受ける前に必要な薬物調整をイラストでまとめました。

TMS治療にあたっては、それ以外のお薬については継続して服用することが可能です。

電気けいれん療法(ECT)などでは、けいれん閾値を下げるリチウムの中止などが必要となりますが、TMS治療では問題ありません。

抗てんかん薬も問題ないため、気分安定薬は特に減薬の必要がありません

抗精神病薬やベンゾジアゼピン系以外の抗不安薬・睡眠薬も問題ありません。身体疾患のお薬も大丈夫です。

精神刺激薬は治療効果を高めるという報告もありますが、あえて使う必要はありませんし、近年のうつ病治療では一般的には使われません。

TMS治療をご検討の方へ

TMS治療の効果の強みと、向いている患者様をまとめた図表になります。

TMS治療をご検討されている患者様には、お薬も服用されている患者様も多いです。

当院では、かかりつけの先生との治療を大切にしていただきながら、より効果的なTMS治療を行っていきたいと考えています。

服用されているお薬の処方に至るまでには、これまでの診療と治療反応があられたかと思いますので、TMS治療だけを優先して調整するべきではありません。

ですから主治医の先生とご相談いただき、無理のない範囲でお薬調整いただければ幸いです。

【お読みいただいた方へ】
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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年12月19日

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