線維筋痛症における非侵襲的脳刺激のアドオン効果:ランダム化比較試験のメタアナリシスとメタ回帰
こちらの論文は、
のページに引用しています。
M1刺激は痛みの軽減に、DLPFCはうつ症状の改善に期待
こちらの研究は、線維筋痛症患者さんにおけるTMS治療やtDCS治療などの非侵襲的脳刺激による研究を網羅的に調査して、その治療効果をまとめたものになります。
TMS治療の方がtDCSよりも効果サイズは大きいという結果となり、また刺激ターゲットによる効果の違いも比較検討しています。
結論として、一次運動野(M1)の刺激は疼痛軽減効果がやや高く、背外側前頭前野(DLPFC)の刺激はうつ症状の軽減に大きく寄与していることが示されました。
左DLPFCの高頻度刺激は、うつ症状に対する治療と同じになります。
慢性的な疼痛で苦しまれていると、うつ症状が認められることがとても多いです。
うつ症状に対する効果については明らかですので、線維筋痛症のうつ症状などがある方に対してTMS治療を行うことは、十分に治療的意義がありますし、鎮痛効果についても併せて期待していくことができます。
鎮痛効果自体はM1の方がやや高いという結果となっていますが、本当に鎮痛効果が期待できるのかは、さらなる研究が必要と思われます。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
目的
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や経頭蓋直流刺激(TDCS)などの非侵襲的脳刺激(NBS)のFM治療における効果は、依然として結論が出ていない。
本研究の目的は、FMの治療において、NBSをアドオン治療として使用することに関する現在のエビデンスを調査することであった。
方法
FMの治療におけるNBSのランダム化対照試験を分析するために、Medline、Embase、PsycINFOおよびCochrane Libraryの電子データベースを用いた検索を、開始から2015年7月まで行った。
合計16件の研究を今回のメタアナリシスの対象とした。
結果
組み入れられた16件の研究のプールされた平均効果量から、NBSの有意な好ましい効果が明らかになった。
痛み、抑うつ、疲労、睡眠障害、圧痛点を軽減し、一般的な健康/機能を改善する加重平均効果サイズは、それぞれ0.667(95%信頼区間0.446、0.889)、0.322(95%信頼区間0.140、0.504)、0.511(95%信頼区間0.247、0.774)、0.682(95%信頼区間0.350、1.014)、0.867(95%信頼区間0.310、1.425)、0.473(95%信頼区間0.285、0.661)となった。
rTMSによる刺激は、TDCSによる刺激と比較して、より大きな効果サイズをもたらした(効果サイズはそれぞれ0.698および0.568;P<0.0001)。
一次運動野(M1)への刺激は、背外側前頭前野への刺激と比較して、疼痛軽減の効果がわずかに大きかった(効果量0.709および0.693;P<0.0001)。
また、効果の大きさと治療法および投与量との間に線形関係は認められなかった。
報告された有害事象のほとんどは軽微なものであった。
結論
rTMSおよびTDCSはいずれも、FMの治療において実行可能かつ安全な方法であると考えられる。
FM患者においてrTMSとTDCSの一般的な効果は両立する。
M1刺激は痛みの軽減に、背外側前頭前野はうつ症状の改善に効果があると考えられた。
【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。
また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。
取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。
執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年5月1日
関連記事
スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説
勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説
投稿日:
人気記事
子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説
「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説
投稿日: