欧州の専門家グループは、2014年に発表された反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)の治療効果に関するガイドラインを再評価した[Lefaucheurら、Clin Neurophysiol 2014;125:2150-206]。
| 表 20.
| 臨床での適応に応じたrTMSの有効性に関する推奨事項のまとめ
|
| 神経障害性疼痛 |
疼痛側と反対側のM1に対するHF-rTMSでは明確な鎮痛効果を示す(レベルA)。一方で、LF-rTMSではおそらく効果がない(レベルB) |
| 複合性局所疼痛症候群1型 |
疼痛側とは反対側のM1に対するHF-rTMSは鎮痛効果を示す可能性がある(レベルC) |
| 線維筋痛症 |
線維筋痛症患者のQOL向上に関して、左M1に対するHF-rTMSが有効性を示す可能性がある(レベルB) |
| 線維筋痛症 |
線維筋痛症に関して、左DLPFCに対するHF-rTMSは鎮痛効果を示す可能性がある(レベルB) |
| パーキンソン病 |
パーキンソン病患者の運動症状に関して、両側M1領域に対するHF-rTMSは有効である可能性がある(レベルB) |
| パーキンソン病 |
パーキンソン病患者に関して、左DLPFCに対するHF-rTMSは抗うつ効果を示す可能性がある(レベルB) |
| motor stroke |
急性期後手指運動回復に関して、傷害反対側M1に対するLF-rTMSは明確な効果を示す(レベルA) |
| motor stroke |
急性期後手指運動回復に関して、傷害同側M1に対するHF-rTMSは有効性を示す可能性がある(レベルB) |
| motor stroke |
慢性期手指運動回復に関して、傷害反対側M1に対するLF-rTMSは有効性を示す可能性がある(レベルC) |
| 脳卒中後失語症 |
慢性期の非流暢性失語症回復に関して、右IFGに対するLF-rTMSは有効性を示す可能性がある(レベルB) |
| 半側空間無視 |
急性期後脳卒中における半側空間無視の回復に関して、傷害反対側左頭頂部に対するcTBSは有効性を示す可能性がある(レベルC) |
| 多発性硬化症 |
下肢痙縮において最も影響を受けている下肢とは反対側のM1(または両側M1)の下肢領域に対するiTBSは有効性を示す可能性がある(レベルB) |
| てんかん |
てんかん病巣に対して、LF-rTMSは抗てんかん効果を示す可能性がある(レベルC) |
| アルツハイマー病 |
アルツハイマー病患者の認知機能、記憶力、言語レベルを改善するためのマルチサイトrTMS-COGは特に軽度・早期段階で有効性を示す可能性がある。(レベルC) |
| 耳鳴症 |
慢性耳鳴症に関して、左半球聴覚野(または患部とは反対側の聴覚野)に対するLF rTMSは有効性を示す可能性がある(レベルC) |
| うつ病 |
8の字型コイルまたはH1コイルを用いた大うつ病における左DLPFCに対するHF-rTMSは明確な抗うつ効果を示す(レベルA) |
| うつ病 |
大うつ病に関して、左DLPFCに対する深部HF-rTMSは明確な抗うつ効果を示す(レベルA) |
| うつ病 |
大うつ病に関して、右DLPFCに対するLF-rTMSは抗うつ効果を示す可能性がある(レベルB) |
| うつ病 |
大うつ病に関して、DLPFCに対する両側右側LF-rTMSと左側HF-rTMSは抗うつ効果を示す可能性がある(レベルB) |
| うつ病 |
大うつ病に関して、DLPFCに対する両側右側cTBSと左側iTBSが抗うつ効果を示す可能性がある(レベルB)。一方で、片側右側cTBSは効果がない可能性がある(レベルC) |
| うつ病 |
下記の比較では抗うつ薬の効果に差がない可能性がある(レベルC)。右LF-rTMS vs. 左HF-rTMS、DLPFCに対する両側rTMS vs. 片側rTMS、およびrTMSの単独使用 vs. 抗うつ薬との併用 |
| 心的外傷後ストレス障害 |
心的外傷後ストレス障害に関して、右DLPFCに対するHF-rTMSは有効性を示す可能性がある(レベルB) |
| 強迫性障害 |
強迫性障害に関して、右DLPFCに対するLF-rTMSは有効性を示す可能性がある(レベルC) |
| 統合失調症幻聴 |
統合失調症の幻聴に関して、左TPCに対するLF-rTMSは有効性を示す可能性がある(レベルC) |
| 統合失調症陰性症状 |
統合失調症の陰性症状に関して、左DLPFCに対するHF-rTMSは有効性を示す可能性がある(レベルC) |
| 依存症および渇望 |
タバコの渇望と消費に関して、左DLPFCに対するHF-rTMSは有効性を示す可能性がある(レベルC) |