第2回臨床TMS研究会のご報告

2021年4月18日、第2回臨床TMS研究会が開催されました。

当院の顧問いただいている野田先生が主催されている研究会で、全国から48名の医療機関、TMS機器メーカー、治療関係者が参加されました。

当院からは、大澤・井川・藤永の3名が参加させていただきました。

保険診療で実施されている医療機関から、TMS治療の実情を伺える貴重な機会となりました。

また、かねてより参画をすすめていますデーターベース研究事業についてのご説明がありました。

スタッフでの共有と忘備録も兼ねて、こちらでご報告させていただきます。

各施設の治療状況

保険診療でTMS治療を行われている4つの医療機関での実施状況を教えていただきました。

神奈川県立精神医療センター(中村元昭先生)

効果がある患者さんでは、セッション数がしっかりと担保できることが大切。

アジア人は頭蓋骨が厚く、運動閾値がアメリカ人より3~4割程度高く、刺激強度が高くなる可能性がある。

痛みも強くなり導入できなくなったり、継続できない方も少し多いかもしれない。

効果判定のために20回ほど必要で、セッション回数を増やすことが治療効果を担保するためには重要で、頭部の痛みについては、VASスケールをとって評価していくが必要。

DLPFCに対してしっかりと刺激ができていると、VASが軽減していくことが多い。

東京慈恵会医科大学病院(山崎龍一先生)

1日4~5名の患者さんに対して実施されていて、コロナ禍で入院のみで実施している。

28例中寛解21例(75%)、反応2例(計82%)と非常に良い結果であったが、精神療法との併用による効果が考えられる。

合併症がある方や認知機能低下が目立っている高齢者では効果がきたしにくい結果であった。

反応が期待できる方は、2~3週目くらいに効果が出てくる方が多い。

双極性障害に対する先進医療を利用した臨床研究についてもご紹介がありました。

大阪医科薬科大学病院(今津伸一先生)

100人ほど導入以来があったうち、23例がTMS治療導入となっており、1/5ほどの導入となっている。

比較的に軽症患者さんが多い中で、23例中寛解13名(56.5%)、反応1例(計60.8%)となった。

6週目にかけて少しずつ良くなってくる方が多く、「頭がすっきりした」「本が集中して読めるようになった」といった自覚症状の改善、精神運動抑制が他覚的に症状が改善していた。

慶應義塾大学精神・神経科学教室(和田真孝先生)

保険診療としてニューロスター、臨床研究としてマグプロを用いてTMS治療を行っている。

ニューロスターは誰が行っても同じようにできるという特徴、マグプロは人による差が出てしまうかもしれないという特徴がある。

両側TMSの治療効果の比較を臨床研究で行っていて、右LFrTMS600発+左HFrTMS3000発という1時間ほどかかってしまう治療法と、右cTBS600発+左iTBS600発という5分ほどの治療法の比較をしている。

イフェクサーを用いて治療抵抗性であることを確認したうえで、臨床研究に組み入れている。

維持治療として、イフェクサーとLiにする群とイフェクサーと週1のTMS治療群(右LFrTMS15分900発)とにわけて研究している。

111例中治療反応は53.3%、寛解率22.7%となっている。

高齢者で、治療完了後には効果がなかったけれども、さらに2~3週後に効果が認められるケースがあった。

こちらは神経可塑性の違いによるものかもしれず、経過をフォローしていく必要があります。

TMSデータベースレジストリ構築について

当院開院時点より野田先生に伺っていたデータベース事業について、TMS治療関係者にご紹介がありました。

こちらは日本人を対象にした臨床的なTMS治療についてのデータを収集して、研究に生かしていこうとする事業になります。

各医療機関が協力してデータベースが作れれば、より良い治療法や条件などを分析することが可能になります。

自由討論

その後の自由討論では、

  • 保険診療が普及するための方法
  • アメリカでのTMSプロトコールの多様さ

について、議論となりました。

カテゴリー:お知らせ, こころみ医学  投稿日:2021年4月18日

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