アルコール依存症に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の有効性:シャム刺激対照試験
こちらの論文は、
のページに引用しています。
右DLPFC高頻度刺激が効果あるかもしれない
こちらの論文は、アルコール依存症に対するrTMS治療の効果を調べた論文となります。
TMS治療は、依存症の治療に対して効果が期待されています。アルコール依存症について、こちらでは右背外側前頭前野をターゲットに、高頻度rTMSを行って、アルコールに対する渇望を抑える効果を検証しました。
45名の患者さんを2:1で実刺激群を多めにランダムに分けて、患者さんはどちらに割り当てられたかわからないようにして検討しています。
治療者側はどちらに割り当てたかわかってしまうので正確性が少し揺らぎますが、結果的に中等度の効果サイズが認められています。
薬物依存症についてのTMS研究は比較的有望ですので、アルコール依存症についても効果が少しずつ報告がされてくるかもしれません。
適切なターゲットと刺激法が、少しずつ開発されていくことが期待されます。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
目的
アルコール依存症患者において、右背外側前頭葉皮質(DLPFC)への高頻度反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の抗渇望効果を検討する。
方法
アルコール依存症候群(ICD-10 DCRによる)で、Clinical Institute of Withdrawal Assessment in Alcohol Withdrawal(CIWA-Ar)スコアが10以下の患者45名を対象に、前向きの単盲検偽刺激対照試験を実施した。
患者は実刺激と偽刺激のrTMSに2:1の割合で割り当てられ、30人の患者が右DLPFCへの実刺激rTMSを、15人の患者が偽刺激rTMSを受けた(周波数10Hz、1トレイン4.9秒、トレイン間間隔30秒、1セッション20トレイン、合計10セッション)。
アルコール渇望質問票(ACQ-NOW)を実施し、ベースライン時、最後のrTMSセッション後、最後のrTMSセッションから1ヶ月後のアルコール渇望の重症度を測定した。
結果
二元配置反復測定分散分析(ANOVA)により、実刺激rTMSを割り当てられた群では、偽刺激に比べてrTMS後のACQ-NOW総得点および因子得点が有意に減少した。
治療と時間の交互作用の効果サイズは中程度であった(eta(2)=0.401)。
結論
右背外側前頭前野高頻度rTMSは、アルコール依存症において有意な抗渇望効果を有することが明らかになった。
この結果は、rTMSを他の抗渇望薬と組み合わせることで、アルコール依存症の渇望とその後の再発を抑える効果的な戦略として作用する可能性を強調するものである。
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年7月2日
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