大うつ病性障害での抗うつ剤治療寛解後の中止:システマティックレビューとメタアナリシス

こちらの論文は、

のページに引用しています。

6か月以上の維持療法で20%の再発低下

こちらの論文は、抗うつ剤の維持療法について調べたメタアナリシスになります。

まずは全体として、抗うつ薬群はプラセボ群に比べて再発率が20%ほど低下しています。プラセボで60%程度の再発予防が可能ですが、抗うつ剤併用することで80%程度まで再発予防できます。

その必要な期間については、6か月から1年で特に大きな差が認めなかったことから、最低6か月以上が必要とされています。

また再発予防効果としては三環系抗うつ薬>SSRI>その他の新薬となりましたが、副作用とのバランスも考慮するとSSRIが最も良い成績となりました。

容量設定については、固定で同じ量で行くよりも、状態によって調整するほうが効果的とされています。

このように抗うつ剤については、再発予防に対する維持療法のエビデンスが蓄積されているのが、TMS治療と比較した際の薬物療法のメリットになります。

論文のご紹介

抗鬱剤の維持療法に必要な機関についてのメタアナリシスをご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

アブストラクト

大うつ病性障害(MDD)の急性期治療が成功した後に遭遇する重要な臨床的問題は、うつ病症状の再発である。

抗うつ薬による維持療法の継続は一般的に推奨されているが、寛解のために継続して抗うつ薬を処方する必要があるかどうかについては、確立されたプロトコルはない。

今回のメタアナリシスでは、寛解を達成するために今まで使用していた薬剤を継続した場合とプラセボに切り替えた場合の再発および治療失敗のリスクを、臨床的に重要ないくつかのサブグループで評価した。

ランダム効果モデルを用いて、プールされたオッズ比(OR)(±95%信頼区間(CI))を算出した。

40件の研究(n=8890)において、抗うつ薬群はプラセボ群に比べて再発率が有意に約20%低かった(OR=0.38、CI:0.33-0.43、p<0.00001;20.9% vs 39.7%)。

抗うつ薬群とプラセボ群の再発率の差は、三環系抗うつ薬(25.3%、OR=0.30、CI:0.17-0.50、p<0.00001)、SSRI(21.8%、OR=0.33、CI:0.28-0.38、p<0.00001)、その他の新薬(16.0%、OR=0.44、CI:0.36-0.54、p<0.00001)の順に大きかったが、忍容性に対する効果量はSSRIが他の抗うつ薬よりも大きかった。

プラセボとの比較では、柔軟な用量設定(OR=0.30、CI:0.23-0.48、p<0.00001)の方が、固定用量(OR=0.41、CI:0.36-0.48、p<0.00001)よりも効果量が大きかった。

また、寛解後に6ヵ月以上の継続投与を行った研究でも、抗うつ薬の継続使用は、プラセボの使用よりも再発率が低かった(OR=0.40、CI:0.29-0.55、p<0.00001;20.2% vs 37.2%)。

再発率の差は、維持期間6ヵ月(OR=0.41、CI:0.35-0.48、p<0.00001、19.6% vs 37.6%)から1年以上(OR=0.35、CI:0.29-0.41、p<0.00001、19.9% vs 39.8%)まで同様であった。

抗うつ薬群とプラセボ群の全原因による脱落率は、それぞれ43%と58%であった(OR=0.47、CI:0.40-0.55、p<0.00001)。

忍容性の割合は両群とも~4%であった。

青年期の再発率(OR=0.32、CI:0.18-0.64、p=0.0010、41.0% vs 66.7%)および全原因による脱落率は成人に比べて高かった。

再発や治療失敗を防ぐためには、維持療法を行い、寛解後少なくとも6ヵ月間は慎重に対応することが推奨される。

SSRIはバランスのとれた薬剤であり、再発予防には柔軟な用量調整がより効果的である。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年9月22日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日:

【2024年2月最新】東京のTMS治療クリニック24院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

目次 東京でのTMS治療 東京で安心できるTMSクリニック5選 東京でTMS治療を受けられるその他の16医療機関 TMS治療クリニックの選び方 東京横浜TMSクリニックについて 感染対策について 東京でのTMS治療 うつ… 続きを読む 【2024年2月最新】東京のTMS治療クリニック24院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

投稿日:

コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

臨床研究の概要 医療法人社団こころみ東京横浜TMSクリニックは、「コロナ後遺症に伴う不安抑うつ・認知機能障害に対する新規経頭蓋刺激療法(rTMS)による治療法開発に向けた多施設共同試験」を実施いたします。 新型コロナウイ… 続きを読む コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

「冬になると気分が落ち込む」「寒さでやる気が出ない」と、冬になるたびに変化するご自身の体調に戸惑っていませんか? 不調を感じているご本人や、ときには周囲からも「寒さが苦手なだけだろう」と思われがちな冬の不調。 実は、冬季… 続きを読む 冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日: