TMS治療のコイルによる違い

東京横浜TMSクリニックでは、3種類の最新コイルを使い分けることでTMS治療を行っています。

治療機器は同じですが、コイルによって刺激の特徴が変わってきます。

当院で使っているマグベンチャー社のマグプロにおけるコイルの違いをご紹介します。

当院の3つのコイル

東京横浜TMSクリニックの3つのコイルをイラストで紹介します。

東京横浜TMSクリニックでは、3つのコイルを採用しています。

  • こすぎ神奈川院:Cool-B65・Cool D-B80
  • みなと東京院:Cool-B70

それぞれのコイルに特徴があり、治療によって使い分けています。

うつ病治療については、みなと東京院ではCool-B70、こすぎ神奈川院ではCool-B65になります。

どちらもうつ病治療に対して効果が期待できるコイルで、8の字コイルと呼ばれています。

8の字の交点のところに最も強い電流(渦電流)が流れるようになっていて、ピンポイントで脳内を刺激できます。

Cool-B70の方がコイル直径が厚く、その分強い磁場を発生させやすく、パワーが出ます。

出力をあげれば差はないので、Cool-B65とも同じ効果が期待できます。

またこすぎ神奈川院では、Cool-D-B80というdeepTMSが可能なコイルを日本で初臨床導入しています。

こちらはバタフライコイルと呼ばれていて、深い部分を刺激することができます。

強迫性障害や依存症など、報酬系と呼ばれる部分へアプローチしたいときに活躍するコイルです。

Cool-B65

TMS治療B-65コイルの画像です。

こちらのコイルは、もっとも標準的な8の字コイルになります。

このコイルに電流を流すと、コイルに対して垂直方向に磁場が発生します。

この磁場によって頭蓋骨を超えて、脳の内部でコイルと並行で逆方向の渦電流が生じます。

8の字の交点のところが最も強い電気刺激となるため、脳内のターゲットをピンポイントで刺激をすることができます。

コイルの詳細(MagVenture Cool-B65)

Cool-B70

TMS治療のコイルであるB-70の画像になります。

こちらのコイルは、B-65と比べるとコイルの厚みが異なり、直径も大きくなっています。

その分しっかりと磁場を発生させて、パワーが出る特徴があります。

メリットとしては、初回測定時に運動野を同定してrMT測定を行いますが、その時の同定がしやすく簡単に見つかります。

当院の技士は熟練しておりますので、Cool-B65でも数分で同定できますので安心してください。

その一方で、コイルが重たいために女性技士には負担が大きくなります。

こういった手技上の違いはありますが、TMS治療の刺激が良くも悪くも強くできるため、強く刺激したい場合にはこちらの方が向いているコイルになります。

コイルの詳細(MagVenture Cool-B70)

円形コイルCool-125

TMS治療の円形コイルcool-125の画像です。

円形コイルは、かつてはよく使われていたコイルの一つです。

円形ですので刺激のフォーカスがつきづらく、刺激の範囲が広くなる特徴があります。

たとえばうつ病のDMPFCは広い領域のため、ぼやっと全体的に刺激する形になります。

このためメリットとしては、刺激部位が多少ズレてもあまり変わりなく、手技がやりやすい点が挙げられます。

しかしながらピンポイントで刺激ができず、効果としては弱まる可能性があります。

欧米最新のTMS治療では、脳の深部との接続のしやすさ(コネクティビティ)が最も高いポイントを同定して、ナビゲーションシステムで刺激をしていきます。

治療効果が良いところを同定してピンポイントで刺激するため、当院ではBeamF3法を採用して刺激部位を同定し、8の字コイルでピンポイントで刺激をしています。

コイルの詳細(MagVenture Cool-125)

Cool D-B80

TMS治療のD-B80コイルの画像です。

こちらのコイルは、バタフライコイルと呼ばれるコイルになります。

その名の通りで、蝶が羽を広げているようなコイルで、傘のようにして頭部にあてて刺激するコイルです。

角度を変えて磁場の向きをかえることで、通常の8の字コイルよりも深部刺激をすることが可能なコイルになります。

このため報酬系など深部構造にアプローチしたいときに使われるコイルで、強迫性障害のアメリカFDA認可を2018年に正式取得したコイルになります。

強迫性障害に対して正式認可のあるコイルは、こちらのコイルと日本未発売のbrainswayのみとなります。

deepTMSを行う場合は、当院ではこちらのコイルを用いています。

コイルの詳細(MagVenture Cool D-B80)

TMS治療をご検討の方へ

TMS治療の効果の強みと、向いている患者様をまとめた図表になります。

TMS治療で使われるコイルの違いを説明させていただきました。

治療コイルもさまざまなものが開発されており、こちらのコイル1つで車が買えてしまうほどの金額となります。

東京横浜TMSクリニックでは3種類のコイルを導入しており、こちらを患者様によって使い分けています。

みなと東京院とこすぎ神奈川院は、電車で20~30分程度の距離になりますので、コイルも使い分けながら治療を行うことができます。

TMS治療をご検討の方は、どうぞ気軽にご相談下さい。

大澤 亮太

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2022年1月29日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

TMS治療は怪しい?問題点と誤解を解説

体に負担を与えずに脳にアプローチする治療法として、近年注目を集めている「TMS治療法」。心の病気に対する、新たな治療効果が期待されています。 世界中でエビデンスが蓄積されつつあるTMS治療ですが、日本でも正式な適応が認め… 続きを読む TMS治療は怪しい?問題点と誤解を解説

投稿日:

当院のうつ病TMS治療成績(2022年1月~2022年12月末)

治療成績 病名:うつ病 期間:2022年1月~2022年12月31日 症例数:117名(30回実施214名) 寛解率56% 反応率79%程度 2022年1月から、2022年12月末までに30回以上実施したうつ病・うつ状態… 続きを読む 当院のうつ病TMS治療成績(2022年1月~2022年12月末)

投稿日:

当院の強迫性障害TMS治療成績(2022年1月~2022年12月末)

治療成績 病名:強迫性障害 期間:2022年1月~2022年12月末 症例数:25名(データ:16名) 30%改善:50% 2022年1月から、2022年12月末まで1年間の全症例のうち、強迫性障害として急性期治療終了と… 続きを読む 当院の強迫性障害TMS治療成績(2022年1月~2022年12月末)

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

「燃え尽き症候群(バーンアウト)」とは?なりやすい人や治療法を解説

「燃え尽き症候群(もえつきしょうこうぐん)」とは、その名の通り、それまでの意欲や熱意がまるで燃え尽きたように消失してしまう状態のことです。 もともとは意欲があった人が、突然やる気を失う。いきなりの変化に「あんなに熱意があ… 続きを読む 「燃え尽き症候群(バーンアウト)」とは?なりやすい人や治療法を解説

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日: