肥満成人の体重および食物消費に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の影響:ランダム化比較試験

こちらの論文は、

のページに引用しています。

左DLPFC高頻度刺激が食欲を抑え、体重減少させるかもしれない

こちらの研究は、肥満患者さんに対して左DLPFC高頻度刺激を行い、食事量と体重変化を追った研究になります。

43名の肥満患者さんをランダムに分けて、本物の刺激と偽物の刺激にわけています。

結果としては、1週間に2回の合計8回の刺激で、実刺激群では―2.75㎏の体重減少と、食事摂取量の減少が認められました。

TMS治療の過食症(摂食障害)に対する肯定的な結果ではありますが、これをもって効果があるとはいえません。

誰が実刺激なのかもわからないように(盲検化)した研究を行っていく必要もあります。

効果が認められないという他の研究もあるので、さらに規模が大きく質の高い研究を行っていく必要があります。

実際にTMS治療を受けている患者さんの中には、食行動が落ち着くことも経験します。

さらなる研究で、治療効果が分かってくるかもしれません。

過食症が食物依存症としての側面が強かったり、うつ症状に伴うものであれば、TMS治療の効果が期待できるかもしれません。

論文のご紹介

摂食障害に対するTMS治療のRCTをご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

いくつかの研究では、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)のシングルセッション後に、食への渇望が有意に減少したことが報告されているが、肥満被験者の食の消費と体重に対するrTMSのマルチセッションの効果に関する研究はほとんどない。

目的

肥満成人におけるrTMSの体重への影響を検討するため、4週間のランダム化偽刺激対照単盲検並行群間試験を実施した。

方法

18歳から70歳までの肥満患者43名(body mass index [BMI] ≥25 kg/m2)を、偽刺激群と実刺激群へ無作為に割り付けた(実刺激群21名、偽刺激群22名)。

左背外側前頭前野(DLPFC)を標的としたrTMSを4週間かけて計8回実施した。主要評価項目は、ベースラインから4週間までの体重変化(キログラム)。

副次的評価項目は、体格測定値、心血管危険因子、食物摂取量および食欲の変化であった。

方法

18歳から70歳までの肥満患者43名(body mass index [BMI] ≥25 kg/m2)を、偽刺激群と実刺激群へ無作為に割り付けた(実刺激群21名、偽刺激群22名)。

左背外側前頭前野(DLPFC)を標的としたrTMSを4週間かけて計8回実施した。

主要評価項目は、ベースラインから4週間までの体重変化(キログラム)。

副次的評価項目は、体格測定値、心血管危険因子、食物摂取量および食欲の変化であった。

結果

実刺激群の参加者は、8回のrTMSセッションの後、ベースラインからの体重減少が有意に大きかった(-2.75±2.37 kg vs. 0.38±1.0 kg、p<0.01)。

体重減少と同様に、4週目の脂肪量および内臓脂肪組織は、偽刺激群と比較して実刺激群で有意に減少していた(p<0.01)。

8回のrTMSセッションの後、実刺激群は偽刺激群に比べて1日の総キロカロリーと炭水化物の消費量が少なかった(p < 0.05)。

結論

左DLPFCに対する8セッションの高頻度rTMSは、肥満患者の体重減少を誘導し、食物摂取量を減少させるのに有効であった。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年4月8日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日:

【2024年2月最新】東京のTMS治療クリニック24院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

目次 東京でのTMS治療 東京で安心できるTMSクリニック5選 東京でTMS治療を受けられるその他の16医療機関 TMS治療クリニックの選び方 東京横浜TMSクリニックについて 感染対策について 東京でのTMS治療 うつ… 続きを読む 【2024年2月最新】東京のTMS治療クリニック24院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

投稿日:

コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

臨床研究の概要 医療法人社団こころみ東京横浜TMSクリニックは、「コロナ後遺症に伴う不安抑うつ・認知機能障害に対する新規経頭蓋刺激療法(rTMS)による治療法開発に向けた多施設共同試験」を実施いたします。 新型コロナウイ… 続きを読む コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

「冬になると気分が落ち込む」「寒さでやる気が出ない」と、冬になるたびに変化するご自身の体調に戸惑っていませんか? 不調を感じているご本人や、ときには周囲からも「寒さが苦手なだけだろう」と思われがちな冬の不調。 実は、冬季… 続きを読む 冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日: