摂食障害治療における反復経頭蓋磁気刺激(rTMS):安全性と有効性のレビュー

こちらの論文は、

のページに引用しています。

過食症に効果があるかもしれないが不明

こちらの論文は、摂食障害に対するTMS治療の論文を調べて評価したものになります。

摂食障害についてのTMS研究自体が少ないため確たることは言えませんが、渇望行動と食行動の減少が認められたとする報告も認められました。

その一方で効果がないとする報告もあり、過食症に対して効果が期待できるかもしれないが定かではないという結論となっています。

とくにむちゃ食い障害での過食は、炭水化物に対する依存症に近い側面もあります。

TMS治療は依存症治療でも研究がすすめられており、ニコチン依存症についてはアメリカFDAでも適応が認められています。

ですが禁煙治療においては、あくまでTMS治療は補助治療になります。

過食症の背景には様々な心理的な背景が隠れていることが多く、本質的にはTMS治療で改善しない可能性も多く、心理的な治療が必要となります。

論文のご紹介

摂食障害に対するTMS治療のレビューになります。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

アブストラクト

摂食障害は、重大な病的状態と死亡率をもたらす重大な公衆衛生上の問題である。

摂食障害の治療には様々なアプローチがあるが、回復する患者は半数にも満たない。

反復経頭蓋磁気刺激のような代替療法が必要である。

私は、摂食障害の治療におけるこの技術の安全性と有効性を評価した研究をレビューした。

摂食障害の治療における反復性経頭蓋磁気刺激、シータバーストおよび深部経頭蓋磁気刺激に関する電子文献を検索した。

調査結果はきわめて雑多で、その中には実刺激と偽刺激の比較で渇望と食行動の減少という比較的良好な結果を示した研究もあった。

反復経頭蓋磁気刺激は安全であった。

この分野の研究は、研究数やサンプル数が少ないこと、刺激パラメータが多様であること、プラセボ条件に疑問があること、偽刺激対照デザインがないこと、感度の低い主観的尺度を使用していることなどにより制限されている。

摂食障害に対するrTMSを支持するエビデンスはやや有望である。

摂食障害の治療におけるrTMSの短期的および長期的な安全性と有効性を確認するためには、高い統計的検出力、厳密な無作為化、結果指標、最適なパラメータを用いたLDLPFC/DMPFCに対する高頻度rTMSに関して今後の研究が必要である。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年4月8日

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