大うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)と電気けいれん療法の比較:システマティックレビューとメタアナリシス

こちらの論文は、

のページに引用しています。

精神病症状を伴ううつ病にはECT

こちらの論文は、TMSとECTの治療効果を調べたシステマティックレビューになります。

こちらによれば、ECTは高頻度rTMSより治療効果として優れていましたが、特に精神病症状を伴ううつ病での効果に優れていました。

精神病症状がない場合は、高頻度TMSとECTは同等の効果となっています。

その一方で副作用としては、ECTでは認知機能への影響が認められていて、TMSの方が副作用の少なさという点では勝ります。

少ない症例数での検討にはなりますが、精神病症状を伴うようなうつ病の場合は、そもそもTMS治療を行える状況出ないことも多いですし、ECTの方が望ましいです。

一方で精神病症状を伴わない場合は、TMS治療は副作用の少なさの観点でも、有効な治療選択肢といえそうです。

論文のご紹介

ECTとTMSについてのメタアナリシスをご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

アブストラクト

うつ病の治療には、電気けいれん療法(ECT)が最も効果的である。

ここ数十年の間に、脳に電気刺激を与える代替法である反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が、ECTに代わるうつ病治療法として注目されている。

両者の有効性と安全性を比較した臨床試験がいくつかあるが、サンプル数が少ないことが主な理由で、明確な結論は得られていない。

今回の研究では、統計的検出力を高めるためにメタアナリシスを実施した。

アウトカムは、うつ病における反応、寛解、受容性、認知的効果であった。

英語と中国語のデータベースを含む包括的な文献検索を行い、大うつ病に対するrTMSとECTを直接比較したすべてのランダム化対照試験を特定した。

10件の論文(9試験)、合計425名の患者を同定した。方法論的品質、異質性、感度、出版バイアスを系統的に評価した。

奏効率(64.4%対48.7%、RR=1.41、p=0.03)、寛解率(52.9%対33.6%、RR=1.38、p=0.006)の点でECTは高頻度rTMSより優れていたが、中止率は両治療法間で有意な差はなかった(8.3%対9.4%、RR=1.11、p=0.80)。

サブグループ解析によると、ECTの優位性は精神病性うつ病の患者でより明らかであったが、非精神病性うつ病の患者では高頻度rTMSがECTと同等の効果を示した。

ECTと低頻度rTMSの比較でも同様の結果が得られた。

ECTはHAMDスコアの全体的な改善において高頻度rTMSよりも有意ではない優位性を示した(p=0.11)。中長期の有効性に関するデータは十分ではなかった。

rTMSおよびECTはいずれも忍容性が高く、軽微な副作用しか報告されなかった。

3件の研究結果から、ECTを受けた患者では、視覚的記憶や言語的流暢性などの特定の認知領域がより障害されることが示唆された。

結論として、特に精神病性うつ病がある場合、短期的にはECTはrTMSよりも効果的であり、少なくとも同程度の許容性があると考えられた。

このレビューでは、特に刺激伝達を最適化し、臨床的不均一性を低減するアプローチを用いて、rTMSとECTの長期的なアウトカムと認知効果を比較した質の高い試験が不足していることが明らかになった。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年11月18日

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