不眠症に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果:系統的レビューとメタ分析

こちらの論文は、

のページに引用しています。

TMS治療は不眠に効果があるかもしれない

こちらの論文は、不眠症患者さんのrTMS療法の効果について、先行研究をまとめて解析したメタアナリシスになります。

36の臨床試験の合計2357人のデータを解析したところ、rTMSはピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)の有意な改善が認められました。

とくに睡眠潜時(入眠までの時間)、睡眠障害、睡眠薬の使用の改善に良い結果が認められました。

rTMSは徐波睡眠とREM睡眠の増加によって睡眠の質を改善すると考えられていますが、ポリソムのグラフィーの結果にはばらつきがありました。

このようにrTMSは、不眠症の治療に効果が期待されますが、先行研究でも示されているようにプラセボ効果も大きくでやすいと思われます。

論文のご紹介

不眠症に対するrTMSのメタアナリシスをご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は不眠症の治療に有望な技術である可能性がある。

利用可能な文献の包括的なメタアナリシスを行い、エビデンスを提供する。

目的

不眠症に対するrTMSの有効性と安全性を、単独療法または補完戦略として評価すること。

方法

CENTRAL、PubMed、EMBASE、PsycINFO、CINAHL、PEDro、CBM、CNKI、WANFANG、VIPを最も古い記録から2019年8月まで検索した。

不眠症患者に対するrTMSの効果を検討した英語および中国語で発表されたランダム化対照試験(RCT)を対象とした。

2名の著者が独立して論文選択、データ抽出、レーティングを完了した。Physiotherapy Evidence Database(PEDro)スケールを用いて、収録した研究の方法論的質を評価した。

メタ分析にはRevManソフトウェアを使用した。

エビデンスの質はGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチで評価した。

結果

28の適格試験から36の試験が含まれ、合計2357人の成人参加者(平均年齢48.80歳、男性45.33%)が参加した。

偽刺激と比較して、rTMSはPSQI総スコアの改善(SMD:-2.31、95% CI:-2.95~-1.66;Z=7.01、P<0.00001)および7つの下位尺度のスコアと関連があった。

他の治療と比較して、他の治療への補助としてのrTMSは、PSQI総スコアの改善(SMD:-1.44、95% CI:-2.00~-0.88;Z=5.01、P<0.00001)と関連し、7つの下位尺度のスコアに効果がある可能性があることが示された。

他の治療と比較して、rTMSはピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)総スコアの改善(SMD:-0.63、95% CI:-1.22~-0.04;Z=2.08、P=0.04)と関連し、7下位尺度である睡眠潜時、睡眠障害、催眠薬の使用に良い影響を与える可能性があった。

3組の比較では、ポリソムノグラフィー(PSG)の結果にはばらつきがあった。

一般に、rTMSは徐波睡眠と急速眼球運動(REM)睡眠の増加を通じて、睡眠の質を改善する可能性がある。

rTMS群は、偽刺激またはブランク対照群よりも頭痛を起こしやすかった(RR:1.71、95% CI:1.03~2.85;Z=2.07、P=0.04)。

重篤な有害事象は報告されなかった。

このメタアナリシスの結果を解釈する際には、報告バイアスおよびいくつかのエビデンスのグレードが低い、または非常に低いことを考慮する必要がある。

結論

我々の知見は、rTMSが不眠症に対する安全で効果的な選択肢となり得ることを示している。

より客観的で、QOLに関連した、追跡調査を伴う国際的な多施設、高品質のRCTがさらに必要である。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2022年3月12日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日:

【2024年2月最新】東京のTMS治療クリニック24院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

目次 東京でのTMS治療 東京で安心できるTMSクリニック5選 東京でTMS治療を受けられるその他の16医療機関 TMS治療クリニックの選び方 東京横浜TMSクリニックについて 感染対策について 東京でのTMS治療 うつ… 続きを読む 【2024年2月最新】東京のTMS治療クリニック24院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

投稿日:

コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

臨床研究の概要 医療法人社団こころみ東京横浜TMSクリニックは、「コロナ後遺症に伴う不安抑うつ・認知機能障害に対する新規経頭蓋刺激療法(rTMS)による治療法開発に向けた多施設共同試験」を実施いたします。 新型コロナウイ… 続きを読む コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

「冬になると気分が落ち込む」「寒さでやる気が出ない」と、冬になるたびに変化するご自身の体調に戸惑っていませんか? 不調を感じているご本人や、ときには周囲からも「寒さが苦手なだけだろう」と思われがちな冬の不調。 実は、冬季… 続きを読む 冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日: