気分障害における経頭蓋磁気刺激(TMS)後の軽躁/躁転:システマティックレビューとメタアナリシス

こちらの論文は、

のページに引用しています。

TMSは操転を生じにくい

こちらの論文では、気分障害に対する躁転リスクを調べたメタアナリシスになります。

双極性障害を含む気分障害に対してTMS治療に関する25の研究を分析したところ、4つの研究で躁転の報告が認められました。

こちらを実施劇と偽刺激で比較したところ、統計的な有意差は認められませんでした。

双極性障害では躁転リスクには注意が必要ですが、現在のところTMS治療は躁転リスクが低いだろうと考えられています。

論文のご紹介

rTMSによる躁転リスクに関するメタアナリシスをご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

現在、神経学、精神医学の両分野で経頭蓋磁気刺激(TMS)の利用が増加している。

TMSが治療抵抗性うつ病の治療法として米国食品医薬品局(FDA)から承認された後、TMSは気分障害(MD)の文脈で広く使用されるようになった。

しかし、軽躁・躁転(HMS)発症の可能性に関する報告が増え、MDへの使用に関して懸念が生じている。

目的

MDの治療におけるTMSによるHMS発症の実際のリスクを調査すること。

方法

システマティックレビューのPRISMAガイドラインに従い、2020年3月22日にPubMed, Scopus, Web of Scienceで研究を主導した。

英語で書かれ、MDのTMS治療に焦点を当てた二重盲検/単盲検の研究のみを対象とした。

HMSを含む反復TMSプロトコル研究のメタアナリシスは、RevMan 5.4ソフトウェアを使用して実施された。

リスクオブバイアスの評価は、Cochrane risk of bias toolを使用して行われた。

このプロトコルはPROSPEROにCRD42020175811のコードで登録された。

結果

25の研究がメタ分析に含まれた。二重盲検ランダム化比較試験(RCT)21件、単盲検RCT4件(実刺激に関与した被験者数=576名、偽刺激プロトコルに関与した被験者数=487名)。

最も多く治療された病態は大うつ病エピソード/大うつ病性障害であり、抵抗性うつ病、双極性うつ病、その他のMDがそれに続いた。

研究の多くは反復TMSプロトコルを用い、左背外側前頭前野が主な標的部位であった。

副作用は8つの研究で報告され、4つの研究でHMS(より大きなエネルギー、不眠、過敏性、不安、自殺企図で表現される)が報告された。

実刺激TMSと偽刺激を比較した場合、HMSの発症リスクは条件によって有意な差はなかった。

主要アウトカムと測定法

主要アウトカムは、ベースラインから試験終了までのMontgomery-Asberg抑うつ評価尺度のスコアの変化であった。

副次アウトカムは、臨床反応、寛解および治療により生じた躁病または軽躁病であった。

結論

最も一般的なプロトコルと適切な予防措置を適用すると、TMSはHMSの発生と関係ないようである。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2022年3月12日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日:

【2024年8月最新】東京のTMS治療クリニック21院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

目次 東京TMSクリニック® 東京でのTMS治療 東京で安心できるTMSクリニック5選 東京でTMS治療を受けられるその他の16医療機関 TMS治療クリニックの選び方 東京横浜TMSクリニックについて 感染対策について … 続きを読む 【2024年8月最新】東京のTMS治療クリニック21院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

投稿日:

コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

臨床研究の概要 医療法人社団こころみ東京横浜TMSクリニックは、「コロナ後遺症に伴う不安抑うつ・認知機能障害に対する新規経頭蓋刺激療法(rTMS)による治療法開発に向けた多施設共同試験」を実施いたします。 新型コロナウイ… 続きを読む コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日:

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日: