首都圏における強迫性障害患者に対する深部経頭蓋磁気刺激治療のケースシリーズ

こちらの論文は、

のページに引用しています。

当院の26症例での治療成績は53.9%

こちらの論文は、当院の治療成績をまとめて分析した論文になります。。

アメリカFDAで認可された前帯状皮質(ACC)および背内側前頭前野(dmPFC)に対する20HZ高頻度刺激のプロトコールに従って、暴露反応妨害法の補助療法として治療を実施しています。

日本では強迫性障害に欧米のプロトコールで行った報告はなく、2022年時点で症例数もほとんどないと思われます。

deepTMSは特殊コイルが必要な点と、暴露反応妨害法を上手く組み合わせる必要があり、診断と治療の評価を含めてハードルが高いのが実情です。

今回の論文では、当院で治療開始して1年あまりでの症例を解析し、報告させていただきました。

22か国167名での海外選考報告がありますが、ほぼ同水準の53.9%の治療成績となりました。
【強迫性障害に対するディープTMSの実臨床での有効性:22の臨床施設から収集された市販後データ】

現在は症例数も増えていますが、3か月~半年ごとに集計して解析は継続しており、どのような患者さんに向いているかなど、臨床上のノウハウが蓄積してきています。。

このため治療成績はさらに向上しているため、症例数が一定数を超えたら改めて論文したいと考えています。

サマリーのご紹介

OCDの当院治療成績について、英語査読付き論文(インパクトファクター4.9)として公開されました。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。

以下、日本語に訳して引用させていただきます。

アブストラクト

強迫性障害(OCD)は、従来の薬物療法では十分に寛解が得られない慢性疾患である。

強迫性障害に対する深部反復経頭蓋磁気刺激(dTMS)は、強迫性障害で障害があることが知られている両側の前帯状皮質(ACC)と背側内側前頭前皮質(mPFC)を神経調節する。

海外ではOCDに対するdTMS治療が有効な結果を示しているが、日本ではOCDに対するTMS治療はほとんど実施されておらず、その有効性は不明である。

我々はFDAが承認したdTMSプロトコルをOCD患者26名に実施した。

また、dTMS治療の際には、各患者の強迫観念を引き出す個別暴露刺激も併用した。

TMS治療30セッションの前後で、Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale(Y-BOCS)を用いて、各患者の強迫性障害の重症度の変化を評価した。

OCD患者におけるdTMS治療の奏効は、治療コース終了後のY-BOCSの総スコアがベースライン時のスコアと比較して30%以上減少したかどうかで判定された。

この症例シリーズでは、30回のdTMS治療後の奏効率は53.9%であった。

また、Y-BOCSの総スコアと各項目のスコアが有意に改善された。

Y-BOCSの総得点の変化率は、男女間や投薬中と非投薬中の患者間で差はなかった。

このケースシリーズでは、明らかな有害事象は観察されなかった。

海外で報告されているOCD患者に対するTMS研究の結果と同様に、日本人のOCD患者に対するdTMS治療は良好な治療効果を示す可能性がある。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2022年10月22日

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