強迫性障害に対するディープTMSの実臨床での有効性:22の臨床施設から収集された市販後データ

こちらの論文は、

のページに引用しています。

多施設での奏効率は57.9%

こちらの論文は、強迫性障害での実臨床での治療効果を国を超えて22の医療機関での治療成績をまとめて報告した論文になります。。

アメリカFDAで認可された前帯状皮質(ACC)および背内側前頭前野(dmPFC)に対する20HZ高頻度刺激のプロトコールに従って、治療を実施しています。

治療機器はブレインズウェイのH7コイルを用いており、当院ではマグプロのCool D-B80を用いています。

強迫性障害では30%以上の重症度の改善を治療目標としており、その奏効率は57.9%と報告されています。

30%というと少なく見えますが、生活上での支障は大きくかわります。難治性の病気である強迫性障害としては、非常に大きな可能性のある治療選択肢です。

20セッション以上行うことで治療効果の持続が認められ、回数を重ねることに治療反応が認められることから、部分的な反応を認めた方は継続したほうが治療効果が期待できると結論づけられています。

サマリーのご紹介

強迫性障害の多施設での治療成績です。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。

以下、日本語に訳して引用させていただきます。

背景

H7コイルを用いた深部経頭蓋磁気刺激(dTMS)は、多施設共同プラセボ対照試験に基づき、2018年8月に強迫性障害(OCD)に対してFDAの認可を取得した。

ここでは、実際の診療における強迫性障害に対するdTMSの効果について見ていく。

方法

すべてのdTMSクリニックに、治療の詳細と治療成績に関するデータの提供を依頼した。

主要評価項目は、ベースラインからエンドポイントまでYale Brown Obsessive Compulsive Scale(YBOCS)スコアが30%以上減少した反応と定義した。

副次的評価項目は、YBOCSスコアが初めて奏功基準を満たした初回レスポンスを認め、そこから少なくとも1ヶ月の持続的奏功とした。

解析には、エンドポイント(29回のdTMSセッション後)における奏効率、初回奏効および持続的奏効に必要なセッション数および日数が含まれた。

結果

H7コイルを導入している22の臨床施設から、合計219人の患者について、治療の詳細とアウトカム(YBOCS)の測定に関するデータが提供された。

ベースライン後のYBOCS測定値が1つ以上あった167名の患者を主要解析対象とした。

初回奏効率および持続的奏効率は、それぞれ72.6%と52.4%であった。

29回のdTMSセッション後のYBOCSのスコアがあった患者の奏効率は57.9%であった。

初回奏効は平均18.5セッション(SD=9.4)または31.6日(SD=25.2)後に達成された。

1ヶ月の反応の持続は、平均20セッション(SD=9.8)または32.1日(SD=20.5)後に達成された。

平均的なYBOCSスコアは、dTMSセッションの回数が増えるにつれて継続的に減少した。

結論

実際の臨床現場において、大多数のOCD患者がdTMSの恩恵を受け、改善の兆しは通常20セッション以内に起こる。

29セッションを超えて治療コースを延長するとOCD症状の継続的な減少が見られ、非応答者の治療プロトコルを延長する価値があるとの見通しが示された。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2022年10月21日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日:

【2024年2月最新】東京のTMS治療クリニック24院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

目次 東京でのTMS治療 東京で安心できるTMSクリニック5選 東京でTMS治療を受けられるその他の16医療機関 TMS治療クリニックの選び方 東京横浜TMSクリニックについて 感染対策について 東京でのTMS治療 うつ… 続きを読む 【2024年2月最新】東京のTMS治療クリニック24院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

投稿日:

コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

臨床研究の概要 医療法人社団こころみ東京横浜TMSクリニックは、「コロナ後遺症に伴う不安抑うつ・認知機能障害に対する新規経頭蓋刺激療法(rTMS)による治療法開発に向けた多施設共同試験」を実施いたします。 新型コロナウイ… 続きを読む コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

「冬になると気分が落ち込む」「寒さでやる気が出ない」と、冬になるたびに変化するご自身の体調に戸惑っていませんか? 不調を感じているご本人や、ときには周囲からも「寒さが苦手なだけだろう」と思われがちな冬の不調。 実は、冬季… 続きを読む 冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日: