治療抵抗性うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS):RCTのシステマティックレビューとメタアナリシス

こちらの論文は、

のページに引用しています。

難治性うつ病にはECTの方が効果あり

こちらの論文は、rTMSとECTに関するRCTに関するメタアナリシスになります。

難治性うつ病の患者さんを対象として、2014年まで10年間のRCTを網羅的に集めて、rTMSとシャム刺激、rTMSとECTの治療効果を比較しています。

まずはTMSのシャム刺激(偽刺激)と比較した結果から、NNTは10と、やや厳しい結果となっています。

TMSのおかげで治療できた患者さんは、10人中1人ということになります。抗うつ剤がNNT5などといわれていますから、抗うつ剤よりも効果がやや期待しづらいという結果になります。

そしてrTMSとECTを比較したRCTからは、ECTの方がTMSよりも有意に上回る効果が認められました。

反応した患者さんのうち寛解まで達成できる確率がECTの方が高く、治療効果としてはECTの方が優れているといえます。

論文のご紹介

ECTとTMSについての治療抵抗性うつ病での効果を比較したRCTをご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

現在までに、いくつかのランダム化比較試験(RCT)で、大うつ病の治療における反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の有効性が示されている。

目的

本解析では、治療抵抗性単極性うつ病患者において、rTMSの抗うつ効果を検討した。

方法

1994年1月1日から2014年11月20日までに発表されたRCTを対象に文献検索を行った。

検索は2015年3月1日に更新した。2名の独立した査読者が抄録を評価して組み入れを確認し、適格な研究のフルテキストを検討し、データを抽出した。

メタアナリシスを行い、要約推定値を得た。

主要アウトカムは、ハミルトンうつ病評価尺度(HRSD)で測定されたうつ病スコアの変化であり、事前に平均差3.5ポイントを臨床的に重要な治療効果とみなした。

寛解および治療に対する反応は副次的な結果であり、これらの結果に基づいて治療必要数を算出した。

出版バイアスの可能性については、ファンネルプロットを作成し、Begg’sおよびEgger’sテストを行うことで検証した。

メタ回帰により、特定のrTMS技術パラメータが治療効果に及ぼす影響を検討した。

結果

23件のRCTでrTMSと偽刺激を比較し、6件のRCTでrTMSと電気けいれん療法(ECT)を比較していた。

rTMSと偽刺激を比較した試験では、rTMSにより統計的に有意なうつ病スコアの改善が認められた(加重平均差[WMD]2.31、95%CI 1.19~3.43、P<0.001)。

この改善は、事前に規定された臨床的に重要な治療効果よりも小さかった。

rTMSと偽刺激の間には、寛解または反応の割合に10%の絶対差があった。

これは、治療必要数が10であることを意味する。

寛解および反応のリスク比はそれぞれ2.20(95%CI 1.44-3.38、P=0.001)および1.72(95%CI 1.13-2.62、P=0.01)であり、rTMSが有利であった。

出版バイアスは検出されなかった。

rTMS対ECTの試験では、rTMSとECTの間に統計的・臨床的に有意な差があり、ECTが有利であった(WMD 5.97、95%CI 0.94-11.0、P=0.02)。

寛解と反応のリスク比は、それぞれ1.44(95%CI 0.64-3.23、P=0.38)と1.72(95%CI 0.95-3.11、P=0.07)で、ECTが有利であった。

結論

全体的に見て、治療抵抗性の患者の治療にはECTを支持するエビデンスがあった。

反復経頭蓋磁気刺激は、偽刺激と比較して、うつ病を改善する小さな短期的効果があったが、追跡調査では、その小さな効果がより長期間にわたって継続することは示されなかった。

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年11月5日

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