tDCSは効果あり?rTMSとの違い

体に負担をあたえずに脳に対してアプローチする方法として、非侵襲的脳刺激法が心の治療に取り入れ始めています。

当院が行っているrTMS療法(反復経頭蓋磁気刺激療法)もそのひとつで、2008年より欧米で認可され、日本でも2019年にうつ病に効果ある治療法として認可されています。

そのような非侵襲的脳刺激法のひとつとして、経頭蓋直流電気刺激療法(tDCS)があります。

tDCSは、その機器の簡便さから古くから研究目的で行われてきましたが、近年では非承認医療機器として日本でも販売されるようになってきました。

適切に使えば安全性に問題はないのですが、誤った使い方をされてしまったり、誇大広告がなされてしまったりと、学会でも注意喚起がされています。

現時点でははっきりした効果が実証できず、欧米でも治療認可されていないtDCS。ですがtDCSにも、将来的に治療に活用できる可能性も秘めています。

ここではtDCSについて、詳しくお伝えしていきます。

「tDCS」とは?

tDCSとはどのような治療法でしょうか?イラストで概要を紹介します。

tDCSとは、経頭蓋直流電気刺激法(transcranial Direct Current Stimulation)になります。

電極の間に直流電流を流すというとてもシンプルな機器なので、費用も安価なこともあり、多領域で研究がすすめられました。

1mA程度の弱い電流を流すだけですので、頭皮のピリピリ感や痛み、かゆみなどが副作用として認められますが、軽度のことが多く安全性は高いです。

また、rTMSのような大きな刺激音がないため、研究にあたって偽刺激(シャム刺激)がしやすいという点もメリットとしてあげられます。

頭皮上に置いた陽極側の興奮性を高め、陰極側の興奮性を抑えるように働くと考えられ、それによって脳機能が調節されるのではと考えられています。

うつ病のTMS治療でターゲットとなる背外側前頭前野にtDCSをあわせることで、認知機能を高めるのではといった研究が報告されています。

しかしながら都合が良い結果だけが論文かされたのではないかといった出版バイアスなど、効果に否定的な見解が近年は増えてきています

このようにtDCSは治療効果のエビデンスがしめせておらず、現在では欧米でも治療適応が認められていません

tDCSのメカニズム

tDCSは、頭皮に陽極と陰極の電極を置き、その間に直流電流を流すというシンプルなメカニズムになります。

それにより大脳皮質の興奮性を調節することができると考えられていて、それによって神経可塑性を誘導できる可能性がいわれています。

陽極側は興奮に、陰極側は抑制に働くことが原則となっていて、比較的に簡易に大脳皮質の働きを調整できる可能性があります。

このような治療法ですから、脳をピンポイントで刺激しているわけではなく、脳全体にわたって刺激の影響が生じています。

影響を及ぼす神経ニューロンもrTMSとは異なると考えられていて、rTMSはコイルと垂直方向の介在ニューロン(錐体細胞に入力)、tDCSは錐体細胞の軸索方向に直接影響すると考えられています。

陽極側の大脳皮質では、細胞膜が脱分極しやすい方向に働き、静止膜電位が高くなってすぐに閾値に達しやすくなります。

一方で陰極側の大脳皮質では反対に働き、静止膜電位が低くなって、脱分極しにくくなります。

ですから陽極側の大脳皮質機能を高め、陰極側の大脳皮質機能を抑制すると考えられています。

このように人工的に電場をかえて慣らすような作用が、tDCSには期待されます。

例えばうつ病では、rTMSと同じターゲットである背外側前頭前野(脳波のF3電極のところ)のうち、左側に陽極をあてて右側に陰極をあてて電流を流します。

それによる認知機能の改善などが報告されていましたが、現在は否定的な見解もみられるようになってきました。

tDCSとrTMSの違いとは?

tDCSとTMSの違いをイラストで説明します。

それでは、同じ非侵襲的脳刺激法のtDCSとrTMSの違いを見ていきましょう。

最大の違いは、tDCSが大脳全体に作用しているのに対して、rTMSはピンポイントで大脳皮質に作用することです。

うつ病などの精神疾患は、脳のネットワークの病気という考え方がされるようになってきています。

rTMSはピンポイントに働きかけられるのに対して、tDCSは全体的な働きかけですので、その効果は弱いだろうと考えられています。

また陰極の場所によって刺激の加わり方が変わってしまい、効果が安定しない可能性もいわれています。

このため刺激方法や強度、当日のコンディションによっても影響が大きく、効果が一定しない可能性が高いです。

一方でrTMSに比べると、治療機器が安価で持ち運びやすいです。

適切に使えば安全性は高く、非侵襲的であることは間違いがありません。

欧米でも治療適応されていないことは、tDCS単独では効果が期待しにくいことを示しています。

ですが脳の興奮性を整えるような働きがあるため、将来的にはrTMSの前に行うことで治療効果が高まる可能性はあります。

脳のウォーミングアップのようなイメージかと思われます。

TMSやtDCSの携帯型は効果ある?

最後に、警鐘の意味もこめて書かせていただきます。

この記事を書こうと思ったきっかけは、「東京横浜TMSクリニック」と検索した際に、当院が販売しているかのように装った通販サイトが広告表示されたことにあります。

抗議をして現在のところ取り下げられましたが、こういった現状を危惧しております。

rTMSについても、携帯型の機器が医療機関でレンタルされていたりします。

このような治療機器は非承認のものですし、患者さんご自身でつかうことに安全性が高い治療機器も扱い方を間違えると危険になることもあります。

そして携帯型では、プラセボ以上の治療効果は期待できないといってよいと思います。少なくとも現時点ではそうです。

私たちの使っているmagproのrTMS治療機器は、1台でスーパーカーが買えるほどの治療機器です。

保険適応のニューロスターにいたっては、家が建つかもしれません。

刺激にあたっては熱を発生するので、冷却剤が循環してクーリングしており、安定的に動作しています。

携帯型にそのようなメカニズムは備わっていないので、しっかりと刺激されているとは考えにくいです。

コロナ禍において、携帯型の治療機器は魅力的にうつりますが、治療効果という観点ではおすすめはできません。

TMS治療をご検討の方へ

TMS治療の効果の強みと、向いている患者様をまとめた図表になります。

当院では、TMS治療を専門チームで行っています。

経験豊富な精神科医がお話を伺い、治療選択肢としてTMS治療が適切かどうかをご説明させていただきます。

欧米水準のrTMS療法を行っており、治療効果を検証しながら治療向上を図っています。

ぜひお気軽にご相談ください。

大澤 亮太

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:ブログ  投稿日:2022年2月19日