【適応障害④】30代女性
プロフィール
- 治療期間:【急性期】X年/3月~X年/5月の63日間
- 主訴:気分変動
- TMS治療の目的:抑うつ状態、不安、イライラ感等の解消
- TMS治療プロトコール:右低頻度30分(1800発)30回
これまでの経過
他院精神科を受診して薬物療法を行っていましたが気分変動が続き、不眠、動悸、震え、冷や汗、落ち込み、特定の人物に対するイライラ、過去の自傷行為などが認められていました。
薬物療法としては、セルトラリン(抗うつ薬)50mg、ベルソムラ(睡眠薬)20mg、デジレル(抗不安薬)100mg、マイスリー(睡眠薬)10mg、リーゼ(向精神薬)となっていましたが、抑うつ状態、不安やイライラ感などが遷延しているため、TMS治療を希望されて当院を受診されました。
TMS治療経過

※HAM-D・MADRSは医療スタッフが評価するうつ症状心理検査で、SDSは患者さん本人の自覚症状を評価するうつ症状心理検査
気分変動の病歴からbipolarityが高いと判断し、右低頻度30分(1800発)のプロトコールを30回行いました。
10回目終了時、動機や震えはまだあるものの、以前より落ち込みは減りました。
30回目には、TMS治療開始前と比べて抑うつ状態や不安は軽減しました。
治療後のフォローとしては、抑うつ状態や不安が残存していることから、維持療法として左高頻度を一週間に1回治療(1200発)を行う方針となりました。
症例のまとめ
左高頻度治療はイライラや自傷行為を悪化させてしまうリスクがあり、またbipolarityも高いと判断しました。
このため、まずは右低頻度治療の抑制性プロトコールによって、安全に快方に向かうことが出来ました。
その上で抑うつに効果的な左高頻度にて、残存している抑うつ状態の治療と維持療法をおこなっています。
双極性障害では右低頻度刺激の方がエビデンスが高く、bipolarityが高い患者様は右低頻度刺激の方が安全で効果的な治療であることが確認できた症例です。
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年10月23日
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