慢性難治性疼痛における非侵襲的経頭蓋磁気刺激(TMS):システマティックレビュー

こちらの論文は、

のページに引用しています。

M1領域の高頻度刺激が良いかもしれないが不確実

こちらでは、慢性難治性疼痛の患者さんに対するTMS治療の論文を網羅的に調査分析したメタアナリシス研究になります。

慢性疼痛に対するTMS治療の効果は期待されていて、運動皮質(M1)領域を高頻度刺激することでの有効性の報告があります。

しかしながら依然として症例数は少なく、本当に効果があるのかどうかは現時点では不明といわざるを得ません。

もし効果があるのであれば、手から顔面にかけての領域に関する慢性疼痛に対しては、比較的に治療がしやすいように思われます。

論文のご紹介

慢性疼痛に対するTMS治療のシステマティックレビューをご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

アブストラクト

慢性疼痛における薬物療法の有効性と耐性は限定的である。

そのため、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、確実な疼痛治療の選択肢とみなされており、鎮痛効果が得られることが証明されている。

その長期的な鎮痛効果には、多様な刺激パラメータが影響する。

最適な刺激プロトコルを定義することで、rTMSを有望で有効な手段として検討する際の統一性と一貫性を高めることができる。

我々は、慢性疼痛を抱える患者に対する経頭蓋磁気刺激に関する最新の文献を系統的にレビューして評価し、その有効性を評価し、最適な刺激プロトコルを推定することを目的とした。

2000年から2018年までのPubMed、Ovid Medline、Cochrane database libraryおよびGoogle scholarを対象とした。

“Transcranial magnetic stimulation”、”chronic pain”、”neuropathic pain “などのキーワードを用いて、経頭蓋磁気刺激が長く続く痛みに与える影響について、可能な限りのランダム化臨床試験を調査した。

すべての論文は、データ抽出にCochrane risk of bias toolを用いてバイアスの可能性を判断した。

検索エンジンでは70件の該当する結果が得られた。12のランダム化対照臨床試験が含まれ、局所および全身の慢性疼痛を持つ350人の患者が参加した。

既存の報告では、慢性疼痛患者の背外側前頭葉皮質に対する低頻度rTMSは無効であった。

しかし、運動皮質のM1領域に高頻度TMSで刺激した群では、偽刺激群と比較して鎮痛効果が見られたという。

9つの臨床試験において、運動皮質に対する高頻度刺激の適用後、短時間の鎮痛作用が認められ、鎮痛効果が長時間持続することも証明された。

また、この手法には副作用は認められなかった。

rTMSは、臨床的に意味のある慢性疼痛の緩和をもたらす可能性がある。

しかし、肯定的な結果が得られたにもかかわらず、すべての研究の間には異質性があるため、最適な標的刺激部位およびパラメータに関する確固たる結論を得ることができない。

バイアスを最小限に抑え、パフォーマンスを向上させ、その効力を最大限に発揮するための最適な脳刺激の条件と技術を定義するために、さらなる研究が必要である。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年4月25日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日:

【2024年8月最新】東京のTMS治療クリニック21院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

目次 東京TMSクリニック® 東京でのTMS治療 東京で安心できるTMSクリニック5選 東京でTMS治療を受けられるその他の16医療機関 TMS治療クリニックの選び方 東京横浜TMSクリニックについて 感染対策について … 続きを読む 【2024年8月最新】東京のTMS治療クリニック21院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

投稿日:

コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

臨床研究の概要 医療法人社団こころみ東京横浜TMSクリニックは、「コロナ後遺症に伴う不安抑うつ・認知機能障害に対する新規経頭蓋刺激療法(rTMS)による治療法開発に向けた多施設共同試験」を実施いたします。 新型コロナウイ… 続きを読む コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日:

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日: