TCIを用いた大うつ病性障害でのrTMS反応予測

こちらの論文は、

のページに引用しています。

持続性の気質にrTMS療法は有効?

こちらの論文は、気質・性格がうつ病TMS治療に影響をあたえるかどうかを分析したものになります。

それによれば、持続性の気質が関連していることが示されました。

持続性の気質とは、ひとつのことに注意を向ける傾向のことをさしています。

注意の幅はひとそれぞれですが、持続性の気質の方はひとつのことを集中して行うことができます。

その反面、熱しやすく執着しやすくなるため、うつ病患者さんによくある性格(病前性格)に重なるところがあります。

いわゆる古典的なうつ病では、rTMS治療は効果が期待しやすいと考えられます。

サマリーのご紹介

うつ病でのTMS治療と気質での関係についての論文を紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

目的

本研究の目的は、反復的経頭蓋磁気刺激(rTMS)に対する抗うつ薬の反応を予測する上での気質・性格調査表(TCI)の有用性を調査することであった。

背景

背外側前頭前野のrTMSは抗うつ治療として確立されているが、反応の予測因子についてはほとんど知られていない。

TCIは複数にわたる性格の側面(危害回避、新規性の追求、報酬依存、持続性、自己指向性、自己超越性および協調性)を測定し、そのうちのいくつかは薬物療法や認知行動療法への反応を予測している。

以前の研究では、メランコリー型うつ病における自己指向性とrTMSへの反応との関連性が示唆されたが、メランコリー型うつ病は限られた範囲のTCIプロファイルと関連しているという事実によって制限されていた。

方法

大うつ病エピソードを有する19人の患者は、背外側前頭前野を対象としたrTMSの臨床コースの前にTCIを完了した。

治療効果は、ハミルトンうつ病評価尺度(Ham-D)の50%以上のスコア減少によって定義された。

各TCI次元のベースラインスコアを分散分析により、レスポンダーとノンレスポンダーの間で比較した。また、気質/性格のスコアについてもピアソン相関が計算され、Ham-Dスコアの改善率と比較された。

結果

19人の患者のうち11人がrTMSに反応した。持続性のTスコアは、ノンレスポンダーよりもレスポンダーの方が有意に高かった(P=0.022)。

線形回帰により、持続性スコアとHam-Dスコアの改善率との間に相関がみられた。

結論

持続性スコアの高さはrTMSに対する抗うつ薬の反応を予測した。

これはrTMSによる皮質興奮性の亢進によって説明できる可能性があり、持続性が高い患者では皮質興奮性が低下することがわかっている。

TCI持続性の測定を含む性格評価は、うつ病に対するrTMSにおける精密医療の取り組みの有用な要素となる可能性がある。

TMS治療のうつ病での効果に関係する気質・性格として持続性があげられることを説明する論文の紹介

(A) 1試験あたりの女性患者数の割合、(B)1セッションあたりの刺激数。

気質および性格のスコアとHam-Dのスコアの改善率の比較

Ham-D:ハミルトンうつ病評価尺度

持続性は、線形回帰に基づいてHam-Dスコアの改善率と有意な相関を示した(R=0.55)。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年1月28日

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