単極性と双極性うつ病でのrTMSの臨床的人口統計学的な治療反応予測因子

こちらの論文は、

のページに引用しています。

若い人と認知症状が目立つ人にはTMSが効果的

こちらの論文は、単極性と双極性のうつ状態をひっくるめて、TMS治療の反応予測因子を調べた研究になります。

気分障害は、単極性か双極性かで2つのタイプに分けて考えていきます。

例えば抗うつ剤では、単極性のうつ病に比べて双極性では、反応が異なります。

抗うつ剤の効果が不安定なことから、双極性障害を疑っていくきっかけになることもあります。

TMS治療は単極性と双極性のどちらに対しても効果が期待でき、反応に違いを認めませんでした。およそ半数の患者さんで治療反応が認められました。

また年齢が若い人ほど、TMS治療の効果が良いことが示されています。

とはいっても、20代と40代での違いがあるかはわかりません。

高齢になれば脳の萎縮から磁気刺激の効果が不安定になることは想像しやすいと思いますので、結果が引っ張られている可能性もあります。

また体の症状よりも、認知症状が目立つ人の方がTMS治療効果が期待できます。

このため思考抑制や過度な自責感などが目立つ場合に、TMS治療の効果は期待できるといえます。

サマリーのご紹介

うつ病と双極性障害のうつ状態でのTMS治療効果の予測因子を調べた論文をご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

目的

これまでの研究では、うつ病における反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)の治療反応予測因子が検討されてきたが、臨床的な予測因子に関する知見はいまだに限られている。

また、双極性うつ病(BDD)におけるrTMSの治療反応予測因子は、単極性うつ病(UDD)に比べてあまり研究されていない。

方法

我々は、20セッションのDLPFC rTMS(高周波rTMS、低周波rTMS、両側rTMS)を受けたうつ病患者248人(単極性N=102、双極性N=146)を対象に、二値ロジスティック回帰分析を行い、rTMSの有意な臨床的人口統計学的な治療反応予測因子を検討した。

また、うつ病のタイプ、反応(はい、いいえ)および時間が患者の体性的・認知感情症状の軽減に及ぼす影響を調査した。

結果

うつ病のタイプ(単極性vs双極性)はrTMSの反応に有意な影響を与えなかった。

全患者の45%、UDD患者の51.5%、BDD患者の41%がrTMS治療に反応した。

年齢はすべての患者において、治療反応の唯一の有意な人口統計学的予測因子であった。

体性症状と比較して、認知感情症状はrTMS治療反応の有意な予測因子であった。

UDDおよびBDDの共通および固有の臨床的予測因子が同定された。

結論

若い患者や体性症状よりも認知感情症状のある患者ほど、DLPFC rTMS治療の恩恵を受けやすい。

rTMSはUDDおよびBDD患者において効果がある。

患者は臨床的人口統計学的プロファイルに基づいて選択すべきである。

意義

本研究の結果は、これまでに報告された最大規模のDLPFC rTMSを受けたうつ病性障害患者のサンプルに基づいている。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年1月28日

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