全般性不安障害に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS):パイロットランダム化二重盲検偽刺激対照比較試験
こちらの論文は、
のページに引用しています。
右DLPFC低頻度刺激は、神経活性も変化させて不安に効果が期待できる
こちらは、不安障害についての右DLPFC低頻度刺激の効果と神経活性の変化を調べた研究になります。
パイロット研究ですから症例数は少ないですが、このような研究をもとに推定していくことができます。
こちらでは、右DLPFCの低頻度刺激の効果は、お薬でのプラセボであるシャム刺激(偽刺激)と比べて、統計的に明らかに効果が認められました。
アクティブ刺激では7/9の反応(77.8%)3/9の寛解(33.3%)となっていた一方で、シャム刺激(偽刺激)では2/10の反応(20%)1/10の寛解(10%)という結果になっています。
3か月後でも、アクティブ刺激のみ寛解は6/9(66.7%)と持続しました。
さらには、意思決定を伴うギャンブル課題という不安を伴いやすい決断を要する状況で、TMS刺激を行った群では右DLPFCが活性化していたのが確認でき、心配症状の軽減と相関していることが示されました。
不安障害に対しては、右DLPFC低頻度刺激は効果が期待でき、神経活性の変化としてあらわれていることが推測できます。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
背景
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は全般性不安障害(GAD)の治療に有望であるが、非対照研究でしか検討されていない。
目的
本試験は、GADにおけるrTMSの有効性と神経相関を調査する初めてのランダム化対照試験(clinicaltrials.gov: NCT01659736)である。
方法
25名の参加者(実刺激群n=13、偽刺激群n=12)が登録された。rTMSは、右背外側前頭前野(DLPFC、1Hz、90%安静時運動閾値)を標的とした。
結果
奏効率と寛解率は実刺激群の方が偽刺激群よりも高く、不安、心配および抑うつ症状については、グループ×時間の有意な相互作用が見られ、実刺激群の方が偽刺激群よりも有利であった。
さらに、意思決定を伴うギャンブル課題における右DLPFCの活性化は、実刺激群の治療後のみで増加し、神経活性の変化は心配症状の変化と有意に相関していた。
結論
今回の結果は、rTMSが刺激部位の神経活動の変化と関連してGAD症状を改善する可能性を示す予備的な証拠となる。
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年3月19日
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