うつ病治療のための加速型シータバースト刺激:ランダム化比較試験
こちらの論文は、
のページに引用しています。
刺激強度と両側では有意差ないがiTBSはrTMSと同等に有効
こちらの論文は、両側aTBSと片側rTMSと偽刺激を比較した大規模RCTになります。
対象となったのは、治療抵抗性うつ病の患者さんになります。
寛解率28.2%、地領反応43.7%となり、治療抵抗性うつ病での治療成績としては3割程度の寛解といわれていますので、近い結果となっています。
また様々なプロトコールを比較した先行研究では、両側刺激は効果が高いという結果になっていましたが、今回の結果では有意差が認められませんでした。
また刺激強度についても、80%と120%でも治療成績に有意差が示すことができませんでした。
iTBSはrTMSと同様に有効であることは示されており、iTBSは短時間で実施できるのでメリットが大きいです。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
背景
シータバーストパターン反復経頭蓋磁気刺激(TBS)は、うつ病の治療に応用されつつある。
TBSは短時間で実施可能なため、加速型のスケジュールでの適用に適している。
しかし、加速型TBSの大規模な臨床試験は行われておらず、刺激強度などの最適なTBSパラメータは確立されていない。
方法
安静時運動閾値の80%または120%で行う加速型両側TBSと左片側10Hz rTMSを比較する3群、単盲検、無作為化、対照、多施設臨床試験を実施した。
治療抵抗性うつ病(TRD)患者300名が募集された。
TBS群では10日間で20回の両側前頭前野TBSを行い、rTMS群では4週間で10HzのrTMSを左前頭前野に毎日20セッション行った。
主要アウトカムは、4週目におけるうつ病の治療反応であった。
結果
全体の治療奏功率は43.7%、寛解率は28.2%であった。
3群間で奏効率(p=0.180)、寛解率(p=0.316)に有意差はなかった。
閾値以下と閾値超の強度で適用された加速型両側TBS間の奏効率に有意差はなかった(p=0.319)。
線形混合モデル分析では、時間(p<0.01)の有意な効果が示されたが、rTMSのタイプ(p=0.680)においては示されなかった。
結論
本試験は、これまでで最大の加速型両側TBS試験であり、TRDの治療に有効かつ安全であることを示す証拠となる。
TBSの加速型の適用は、より迅速な抗うつ効果とは関連しなかった。
両側TBSは片側10Hz rTMSより優れた抗うつ効果を示さなかった。
閾値以下と閾値超の加速両側TBSの間に抗うつ効果に有意差はなかった。
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2022年3月5日
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