睡眠不足による認知機能低下に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果:ランダム化試験

こちらの論文は、

のページに引用しています。

睡眠不足にも認知機能にプラスの影響?

こちらの論文は、睡眠不足での認知機能低下に対するTMSの効果を、実刺激と偽刺激にランダムに分けて比較した研究になります。

24時間の不眠負荷を与えて、認知課題をはじめとしたデータをとり、左DLPFC高頻度刺激と偽刺激で比較しています。

結論としては、左DLPFC高頻度刺激が、生理学的にプラスの影響が認められ、長期的な認知機能障害を改善させる可能性がしめされています。

このようにTMS治療は、健康な方の一時的な認知機能低下に対しても効果があるかもしれません。

論文のご紹介

睡眠不足での認知機能低下に対するTMSの効果を検証した論文をご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

目的

現在、睡眠不足(SD)による認知機能障害を効率的に改善する方法はない。

本研究の目的は、SD中の高頻度反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)がSDの悪影響を回復させる効果を評価することである。

方法

健常者66名をrTMS群と偽刺激群に無作為に割り付けた。

両群とも24時間睡眠を奪われた。

SDの間、参加者はいくつかの認知課題をこなすよう求められ、気分の評価を受けた。

唾液コルチゾールレベル、脳由来神経栄養因子(BDNF)、前駆体BDNF(proBDNF)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の血漿中濃度、前頭葉における血流活性化がSDの前後で検出された。

rTMS群には左背外側前頭前野に10HzのrTMS(50パルス×40トレイン、20秒のトレイン間間隔)を2セッション、偽刺激群にはSD中に偽刺激を与えた。

結果

24時間のSDは、健常者において、Nバック課題の正確性の低下、不安と抑うつの両方の増加、コルチゾール値の上昇、前頭葉における血流活性化の低下、BDNF値の減少を誘発した。

特に、rTMSはSDによって誘発される視床下部-下垂体-副腎軸の過活動と前頭葉における血流の減少を改善し、血漿中のproBDNFの消費を減少させることが示された。

結論

24時間のSDは、認知機能障害を誘発した。睡眠不足時の高頻度rTMSによる刺激は、HPA軸と前頭部の活性化に良い影響を及ぼし、長期的には認知機能障害を緩和する可能性がある。

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2022年3月5日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

TMS治療は怪しい?問題点と誤解を解説

体に負担を与えずに脳にアプローチする治療法として、近年注目を集めている「TMS治療法」。心の病気に対する、新たな治療効果が期待されています。 世界中でエビデンスが蓄積されつつあるTMS治療ですが、日本でも正式な適応が認め… 続きを読む TMS治療は怪しい?問題点と誤解を解説

投稿日:

当院のうつ病TMS治療成績(2022年1月~2022年12月末)

治療成績 病名:うつ病 期間:2022年1月~2022年12月31日 症例数:117名(30回実施214名) 寛解率56% 反応率79%程度 2022年1月から、2022年12月末までに30回以上実施したうつ病・うつ状態… 続きを読む 当院のうつ病TMS治療成績(2022年1月~2022年12月末)

投稿日:

当院の強迫性障害TMS治療成績(2022年1月~2022年12月末)

治療成績 病名:強迫性障害 期間:2022年1月~2022年12月末 症例数:25名(データ:16名) 30%改善:50% 2022年1月から、2022年12月末まで1年間の全症例のうち、強迫性障害として急性期治療終了と… 続きを読む 当院の強迫性障害TMS治療成績(2022年1月~2022年12月末)

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

「燃え尽き症候群(バーンアウト)」とは?なりやすい人や治療法を解説

「燃え尽き症候群(もえつきしょうこうぐん)」とは、その名の通り、それまでの意欲や熱意がまるで燃え尽きたように消失してしまう状態のことです。 もともとは意欲があった人が、突然やる気を失う。いきなりの変化に「あんなに熱意があ… 続きを読む 「燃え尽き症候群(バーンアウト)」とは?なりやすい人や治療法を解説

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日: