クラスター化反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)によるうつ病の再発・再燃予防:ランダム化比較試験

こちらの論文は、

のページに引用しています。

TMS治療は薬より再発予防効果あり

こちらの論文は、TMS治療と薬物療法、その併用での再発予防効果を調べたRCTになります。

6か月の薬物療法で、寛解もしくは部分寛解という形で治療反応が認められた患者さんに対して、お薬のみ、TMSのみ、お薬とTMS併用の3群にランダムで分け、12か月追った研究になります。

rTMS療法の実施方法としては、クラスターという形で3~5日にまとめて5~10回のセッションを行っています。

維持療法のために最適なTMSプロトコールは判明していませんが、このように集中的に計画することでアドヒアランスが高まることを根拠に、クラスター化させたプロトコールとなっています。(忘れずに治療に受けやすくなる)

結果としては、薬とTMS併用15.9%、TMSのみ24.2%、薬のみ44.4%となりました。

特に初発のうつ病の場合には、TMS治療が薬物療法よりも再発率が低かったという結果となっています。

このようにTMS治療は、再発予防として薬物療法よりもメリットがあると考えられます。

そして再発例では、抗うつ剤との併用が望ましいといえます。

論文のご紹介

rTMSの薬物療法と比較した再発予防のエビデンスを示した論文になります。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

アブストラクト

反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、うつ病の再発を予防する可能性がある。

この評価者盲検ランダム化対照試験は、うつ病の再発・再燃防止における単剤および併用療法としてのrTMSの有効性と安全性を評価するために企画された。

6カ月間の抗うつ薬(ADP)による導入治療で安定した完全寛解または部分寛解を達成した計281名のうつ病患者を、12カ月間、rTMS(n=91)、ADP(n=108)、または併用(rTMS+ADP、n=82)の治療群に無作為に割り付けた。

月1回のクラスター化rTMSは、3~5日の期間に5~10セッションで実施された。

維持療法の成果は、再発・再燃までの期間と再発・再燃率で評価した。

全体では71.2%(200/281人)の参加者がプロトコル通りの治療を完了した。

rTMS+ADPとrTMSはADPと比較して再発・再燃のリスクを有意に減少させ(P=0.000)、ハザード比はそれぞれ0.297と0.466だった。

rTMSを含むレジメンはいずれも、ADPに比べて再発・再燃率が有意に低かった(15.9%および24.2% vs. 44.4%、P<0.001)。

再発・再燃サブグループでは、初発うつ病の場合、rTMS投与患者はADP投与患者に比べて再発・再燃率が顕著に低かった。

ADPを含むレジメンでは5名の患者が急性躁病を発症したが、rTMS単独では1名も発症しなかった。

rTMSを含むレジメンでは、ADP投与群に比べて特定の副作用がかなり多かった。

結論として、TMSは、単独療法であれ、追加療法であれ、特に初発うつ病患者のうつ病の再発・再燃を予防する上で、抗うつ薬よりも優れていると考えられる。

この治療法は躁転のリスクを増加させないが、特定の副作用のリスクを増加させる可能性がある。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年9月23日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日:

【2024年2月最新】東京のTMS治療クリニック24院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

目次 東京でのTMS治療 東京で安心できるTMSクリニック5選 東京でTMS治療を受けられるその他の16医療機関 TMS治療クリニックの選び方 東京横浜TMSクリニックについて 感染対策について 東京でのTMS治療 うつ… 続きを読む 【2024年2月最新】東京のTMS治療クリニック24院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

投稿日:

コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

臨床研究の概要 医療法人社団こころみ東京横浜TMSクリニックは、「コロナ後遺症に伴う不安抑うつ・認知機能障害に対する新規経頭蓋刺激療法(rTMS)による治療法開発に向けた多施設共同試験」を実施いたします。 新型コロナウイ… 続きを読む コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

「冬になると気分が落ち込む」「寒さでやる気が出ない」と、冬になるたびに変化するご自身の体調に戸惑っていませんか? 不調を感じているご本人や、ときには周囲からも「寒さが苦手なだけだろう」と思われがちな冬の不調。 実は、冬季… 続きを読む 冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日: