軽度認知障害患者における反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果:ランダム化対照試験のメタアナリシス
こちらの論文は、
のページに引用しています。
MCIの認知機能改善にTMSは有効
こちらの論文は、軽度認知機能障害(MCI)のみのRCTをまとめて解析したメタアナリシスになります。
MCIは、人死傷に移行することの多い状態で、正常と認知症の中間のような状態です。
こちらはMC位に関するRCTだけを集めて解析した研究ですが、TMSによる認知機能改善が示されました。
またより効果が認められたのは、両側、高頻度、10回以上の刺激が有効という結論となっています。
認知機能に深く関係しているDLPFCに対する高頻度刺激を複数回重ねることで、認知機能に対する良い影響が期待されます。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
背景
軽度認知障害(MCI)は、正常な老化と認知症の間の中間的な状態である。
アルツハイマー病(AD)の患者では、進行するリスクが高い。
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、MCIやAD患者の認知障害を改善するために用いられる非侵襲的な脳刺激法である。
これまでのメタアナリシスでは、MCIおよびAD患者を対象に実施された研究が含まれていたが、MCI患者を単独で解析した研究はほとんどなかった。
本メタ解析は、MCI患者の認知機能に対するrTMSの効果と安全性、およびその効果に影響を及ぼす可能性のある因子を評価することを目的とした。
方法
本研究で使用したデータは、PubMed、Web of Science、Embase、Cochrane Library、中国国家知識基盤(CNKI)、中国技術定期刊行物(VIP)、Wanfang Database、中国生物医学文献データベース(SinoMed)などの異なるデータベースから検索、スクリーニングされた。
検索された研究は慎重にレビューされ、データが抽出され、データの品質が評価された。
結果
今回のメタ分析では、329人のMCI患者を含む12の研究が対象となった。
解析の結果、rTMSは偽刺激群と比較して、MCI+rTMS実刺激群で認知機能[標準化平均差(SMD)=0.83、95%信頼区間(CI)=0.44-1.22、p=0.0009]および記憶機能(SMD=0.73、95%CI=0.48-0.97、p<0.00001)の改善がみられた。
(1)認知機能の改善は、両側背外側前頭前野など複数の部位への高頻度rTMS刺激下でより顕著であること、(2)10回以上のrTMS刺激でMCI患者の認知機能の改善がより高くなること、が示された。
結論
本研究は、rTMSがMCI患者の認知機能を改善する可能性があること、特に高頻度、多部位、長時間の適用で改善する可能性があることを示した。
しかし、これらの知見を検証し、より効果的な刺激プロトコルとターゲットを探求するために、さらなる研究が必要である。
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2022年3月5日
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