筋痛性脳脊髄炎(ME)患者の疲労感のベースラインでの重症度によってrTMSの効果は影響をうけるのか
こちらの論文は、
のページに引用しています。
筋痛性脊髄炎に高頻度rTMSは有効?
筋痛性脳脊髄炎とは、欧米や日本では慢性疲労症候群の名称の方が馴染みがあるかと思いますが、原因不明の慢性疲労を中心とする病気になります。
こちらの論文は、筋痛性脳脊髄炎に対する高頻度rTMS治療が、慢性疲労の重症度によって効果の差があるかを報告したものになります。
こちらによれば、慢性疲労の重症度によらずに、高頻度rTMS治療は一定の効果があったとされています。
痛みの改善と慢性疲労の改善には、相関関係がなかったという結果にもなっています。
しかしながら研究の精度が低いため、そもそも慢性疲労に効果があるかどうかも定かではありません。
臨床的な実感からも、慢性疲労にもを主訴としている方にTMS治療を行っても、改善効果は乏しいように思われます。
うつ症状を伴っている場合に、全体的な改善の目的でTMS治療を行っていくべきと思われます。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
目的
近年、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が筋痛性脳脊髄炎(ME)患者の治療に応用されている。
しかし、どのような臨床的要因がME患者に対するrTMSの有効性に影響を与えるのかはまだ不明である。
本研究の目的は、ベースラインでの疲労症状の重さが、ME患者に適用されるrTMSの効果に影響するかどうかを明らかにすることである。
方法
22名のME患者を対象とした。各患者は入院して6-8セッションのrTMSを受けた。
本研究では、10Hzの高頻度rTMSを前頭前野に適用した。
疲労症状の重症度を評価するために、rTMS適用前と適用後にBrief Fatigue Inventory(BFI)スコアとVisual Analogue Scale(VAS)レートを適用した。
rTMS適用前のBFIスコアに基づき、患者を「重症群」(n=9)と「軽症群」(n=13)の2群に分けた。
疲労症状の改善の程度を2群間で比較した。
結果
重症群では、rTMS適用前と比較して、退院時だけでなく退院2週間後にもVASレートが有意に低下した。
同様に、軽症群でも同時期にVASレートの有意な低下が認められた。
しかし、VASレートの変化の程度は、両群間で差がなかった。
また、BFIのベースラインスコアとVASレートの変化との間には、有意な相関は示されなかった。
結論
ME患者において、ベースラインでの疲労症状の重さに関わらず、rTMSは疲労症状を改善できると結論付けられる。
rTMSは、ME患者に対する新たな治療的介入となり得ることが期待される。
カテゴリー:ブログ 投稿日:2021年5月29日