大うつ病性障害を合併するパニック障害治療における背外側前頭前野(DLPFC)への反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)のランダム化比較試験
こちらの論文は、
のページに引用しています。
右DLPFC低頻度刺激がパニック障害には有効かもしれない
こちらの論文は、ランダム化二重盲検試験でのパニック障害に対するTMS治療の効果を調べた報告になります。
右DLPFCをターゲットに低頻度刺激を行ったところ、4週の時点でパニック症状が、8週の時点でうつ症状も改善が認められたという結果となっています。
そしてその効果は、6か月後のフォローアップでも効果持続が確認できました。
パニック障害に対するTMS治療の効果はまだ不透明ではありますが、もともと脳の機能的異常が背景に強いパニック障害では、TMS治療の効果が期待できる可能性が高いです。
こちらは25名の患者さんでの研究ですので、サンプルサイズが小さくはありますが、右DLPFC低頻度刺激がパニック障害に対して効果的である可能性があります。
少なくとも抑うつ症状に対する右DLPFC低頻度刺激のエビデンスは高いため、うつ症状を伴っているパニック障害にはTMS治療を検討していく価値があります。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
背景
非盲検試験において、右背外側前頭前皮質(DLPFC)への低頻度反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、パニック障害および大うつ病の症状を有意に改善した。
ここでは、ランダム化二重盲検試験のデータを紹介する。
方法
25名の患者を対象に、右DLPFCへの実刺激または偽刺激rTMSを4週間実施した。
rTMSのパラメータは、安静時運動閾値の110%で1,800回/日、1Hzの刺激であった。
反応は、パニック障害重症度尺度が40%以上低下し、ハミルトンうつ病評価尺度が50%以上低下した場合と定義した。
無作為化段階の終了時に、患者にはさらに4週間、非盲検のrTMSを受ける選択肢が与えられた。
結果
反復測定分散分析の結果、実刺激rTMSは偽刺激rTMSと比較してパニック症状の改善が有意に優れていたが、抑うつ症状には有意な差がなかった。
4週間後のパニック障害に対する反応率は、実刺激rTMS群で50%、偽刺激群で8%であった。
実刺激rTMSの8週間後には、パニック症状に対する反応率は67%、抑うつ症状に対する反応率は50%であった。
反復測定分散分析により、パニック障害、大うつ病、臨床全般印象(CGI)、社会適応に有意な改善が認められた。
臨床的改善は6ヵ月後のフォローアップでも持続した。
結論
パニック症状に有意な効果をもたらすには、4週間のrTMSで十分であったが、より長い治療期間を経ることで、パニック障害と大うつ病の両方に良好な結果が得られた。
これらのデータは、右DLPFCへの抑制性rTMSが、合併する不安と抑うつの症状発現に影響を与えることを示唆している。
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年7月3日
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