再発性うつ病に対するiTBS単療法の抗うつ効果とコイル配置法の比較:二重盲検ランダム化比較試験

こちらの論文は、

のページに引用しています。

刺激時間を長くしたpiTBSは効果的

こちらは、プロロング法と呼ばれる3倍に延長したiTBS治療での効果を検証した論文になります。

同時に、従来の5㎝法での簡易的な刺激部位(DLPFC)の同定方法と、MRIガイド下での精密な同定方法での違いを比較しています。

こちらの研究は二重盲検化ランダム化比較試験なので、信頼性は高い研究になります。

まずpiTBSですが、こちらは非常に良好な成績が示されています。

実刺激と偽刺激を比較して、-40.0% vs.-13.9%となっていて、明確な優位差がついています。

その一方で、刺激部位の同定方法については、有意差なしという結果になっています。

長時間のiTBSを行うことで、微妙な場所のずれでの効果減弱が補正されている可能性もあります。

いずれにしてもpiTBSはiTBSと比べても優れた成績がでており、通常のiTBSよりも刺激時間を長くするほうが効果実感がある臨床実感とも一致します。

当院では、piTBSのプロトコールも行うことができます。

論文のご紹介

プロロングiTBSの有効性を示している論文をご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

標準プロトコルの3倍量を用いた長時間間欠的シータバースト刺激(piTBS)は、反復経頭蓋磁気刺激の最新形であり、大うつ病性障害に対する有効な追加介入である。

本研究では、piTBS単独療法の抗うつ効果を検討することを目的とした。

また、標準的な5cm法と、磁気共鳴画像(MRI)ガイド下での左背外側前頭前野へのコイル配置法との間で有効性を比較した。

方法

今回の二重盲検ランダム化偽刺激対照試験では、再発性うつ病で、優勢なエピソードに対する少なくとも1種類の適切な抗うつ薬治療に反応しなかった患者105名を、以下の3つのグループへ無作為に割り付けた。

piTBS単剤療法(n=35)、反復経頭蓋磁気刺激単剤療法(n=35)または偽刺激(n=35)。

急性期の治療期間は2週間であった。各群とも半数の患者がMRIナビゲーションへ無作為に割り付けられた。

結果

重篤な有害事象は認められなかった。

piTBS群は2週目に偽刺激群よりも抑うつスコアを有意に減少させ(-40.0% vs.-13.9%; Bonferroniによる多重比較補正後のp<0.001 [効果量(Cohen's d)=1.12])、反応のオッズ比も高かった。

MRIナビゲーション法(-32.4%)では、標準法(-40.6%)よりも優れた抗うつ効果は得られなかった。

第1週目における脳刺激と17項目ハミルトンうつ病評価尺度の変化が、抗うつ反応を予測する上で最も重要な変数であった。

結論

左前頭前野piTBS単剤療法は再発性うつ病に有効であり、MRIガイド下でのコイルターゲティング法は標準法よりも優れていない。

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年3月18日

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