経頭蓋磁気刺激時の安全性、忍容性およびノセボ効果:プラセボ対照臨床試験のシステマティックレビューとメタアナリシス
こちらの論文は、
のページに引用しています。
TMS治療は副作用が少なく安全性が高い
こちらの論文は、TMS治療の副作用と安全性を調べたもので、同時にノセボ効果についても調べています。
ノセボ効果とは、治療をうけているというだけで心理的に発生する副作用のことです。
プラセボ効果は有名かと思いますが、その反対の効果になります。TMS治療は脳に刺激を与える治療ですから、そのイメージだけで副作用を感じてしまうことは当然あります。
結果を見ると、13.6%ほどのノセボ効果が認められています。
一方でTMS治療を行うと明らかに副作用報告は増えることから、やはりTMS治療による副作用も実際にあります。
副作用としては、頭痛とめまいが中心で、中止をせざるを得なかった患者さんは2%程度となります。実治療と偽治療で中止になった患者さんの割合はほとんど変わらないため、副作用の程度は大きくはないことがわかります。
また興味深いことに、うつ病をはじめとした精神疾患がある場合は、副作用が認められる割合が強まるということです。
総じてTMS治療は、安全性が高くて副作用も少ない治療といえます。
脳に磁気刺激を与えるという治療のイメージは人それぞれですが、心理的な副作用の可能性も考えて治療にあたっていくことは大切です。
サマリーのご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
背景
反復的経頭蓋磁気刺激(TMS)の適用方法はプラセボ効果を誘発する可能性がある。偽治療を実施した場合に有害事象(AE)が発生する可能性があり、この現象はノセボ効果と呼ばれる。
我々のメタ解析の第一の目的は、TMS時のノセボ効果を明らかにすることである。また、TMSの安全性と忍容性についても検討した。
方法
TMSランダム化比較試験(RCT)をMedlineで系統的に検索した後、治療群と偽治療群で、少なくとも1つのAEを報告した患者数とAEによる中止数を評価した。
結果
93のRCTからデータを抽出した。AEを理由に治療を中止した治療群と偽治療群の患者の全体のプールされた推定値は、それぞれ2.5%(95%信頼区間1.9%~3.2%)と2.7%(95%信頼区間2.0%~3.5%)であった。
少なくとも1つのAEを経験した治療群と偽治療群における患者のプール推定値はそれぞれ29.3%(95%信頼区間19.0%~22.6%)と13.6%(95%信頼区間11.6%~15.8%)であり、治療群では偽治療群と比較してAEを経験するオッズが2.60倍(95%信頼区間1.75~3.86)高いことが示唆された(p < 0.00001)。
最も多かったAEは頭痛で、次いでめまいであった。
うつ病および精神障害を対象とした二次メタ解析では、偽治療群と比較して治療群ではAEを経験するオッズがそれぞれ3.98倍(95%信頼区間2.14~7.40)、2.93倍(95%信頼区間1.41~6.07)高いことが示された。
結論
TMSは安全で忍容性の高い介入治療である。TMS治療中にはノセボ現象が発生することがあり、臨床試験の設計や日常の臨床実務の際にはそのことを認識しておく必要がある。
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年1月28日
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