週1回のrTMSが中枢性脳卒中後疼痛を長期的かつ持続的に軽減させる

一次運動野に対する高頻度刺激が脳卒中後疼痛に効果があるかもしれない

こちらの論文は、脳卒中後の患者さん18名についてTMS治療の効果を調べた研究になります。

18名の患者さんで盲検化もされておらず偽刺激との比較もなされていないので、研究結果の正確性については低くはなってしまいますが、一次運動野を高頻度刺激を週1ペースで行うことで、脳卒中後の疼痛を持続的に軽減できたという報告になります。

本当に効果があるかは不明ではあるものの、半数以上が40%以上の痛みの改善を認めていることから、鎮痛効果が期待できるかもしれません。

また鎮痛効果が認められた場合、週1程度で持続的にTMS治療を行うことで効果を持続させることができることが示唆されています。

論文のご紹介

脳卒中後の疼痛とTMSの効果を調べた論文になります。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

目的

中枢性脳卒中後疼痛は、脳卒中後の一部の患者にとって深刻な問題である。

反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、脳卒中後の疼痛を緩和することが報告されているが、その有効性についてはまだ議論の余地がある。

我々は、rTMSを週1回適用することで、脳卒中後疼痛を持続的に緩和できる可能性を検証した。

材料と方法

本研究では、中枢性脳卒中後疼痛を有する18名の患者を対象とした。

患側の一次運動野上にrTMS(10秒の5Hz-rTMSを10回連続)を照射した。

rTMSセッションは週1回、12週間にわたって繰り返し行われ、6名の患者では1年間介入を継続した。

持続的な効果を評価するために、毎週のrTMSセッションの前に痛みの程度を評価した。

結果

rTMSの効果は、8週目にプラトーに達した。

12週目には、rTMSは61.1%の患者に有効であり、18人の患者のうち5人がvisual analog scaleに基づく70%以上の減少を示し、6人が40-69%の減少を示し、7人が40%未満の痛みの減少レベルにとどまった。

患者を重度の知覚異常のある群とない群に分けたところ、重度の知覚異常のある患者8名は、ない患者に比べて痛みの軽減が少ないことがわかった。

rTMSを1年間継続した6名の患者では、疼痛緩和効果も持続していた。

結論

本研究は対照群を設けない非盲検試験であったが、今回の結果は、一次運動野のrTMSを週1回維持することで、脳卒中後疼痛を緩和できる可能性を示唆するものであった。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年5月1日

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